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「すべてお話しします」ルフィ事件幹部が、30回の面会と200枚超の便箋で明かした巨大(東京 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/11/08 (Sun) 11:38:12

「すべてお話しします」 ルフィ事件幹部が、30回の面会と200枚超の便箋で明かした巨大詐欺組織の全貌:東京新聞デジタル
https://www.tokyo-np.co.jp/article/526751





〈匿流の闇 ルフィ事件を追う〉

 フィリピンを拠点にニセ電話詐欺をかけ、強制送還前の収容所では「ルフィ」などと名乗り、実行役に強盗の指示を出していたとされるグループ。メンバーから「ボス」と呼ばれていた幹部の初公判が、東京地裁で11日に始まる。事件は、警察の捜査の限界が露呈し、組織改編にまで至った。匿名・流動型犯罪グループ「トクリュウ」という言葉も生まれた。なぜ被害は拡大したのか。メンバーらの証言から内幕に迫った。(井上真典、敬称略)



 「ルフィ」グループによる広域強盗・詐欺事件

 フィリピンを拠点にしていたニセ電話詐欺グループの幹部らが、強制送還前の収容所内で、匿名性の高い通信アプリで「ルフィ」などと名乗り、日本の実行役らに強盗を指示。強盗事件は、2022〜23年に各地で起き、死者1人と多数のけが人を出した。摘発者や逃亡中とされるメンバーらは計200人を超える。グループの関与が疑われる詐欺被害は60億円。



◆「私より詳しい人はいない」

 「組織を大きくした責任は、私やボスにある。私より詳しい人はいない。すべてお話しします」。

 2025年7月、当時公判中だった幹部小島智信(48)に、巨大な詐欺組織がどのようにできあがったのか知りたいと、記者は手紙を送った。何度かやりとりするうち、取材に応じた。「ボス」の右腕とされ、組織の全容を知る人物だった。強盗致傷ほう助罪などで懲役20年の判決が確定した今夏までの1年間、30回の面会に応じ、200枚超の便箋を寄せた。

 記者は、小島を含め10人のグループ関係者に対面や電話で取材。彼らの証言から、警察の捜査をかく乱させ、高齢者からカネをだまし取るため、考え尽くされた手口が明らかになった。

◆「ルフィ」とは別に「ボス」がいた

 広域強盗事件で「ルフィ」などと名乗り、実行役に指示していたのは、今村磨人(42)=強盗致死罪などで起訴=とされているが、詐欺グループのトップで「ボス」と呼ばれていたのは、今月11日から東京地裁で裁判員裁判公判が始まる渡辺優樹(42)=同=だった。

 メンバーらへの取材によると渡辺は日本を出国し、2017年夏ごろにタイで7、8人の小さなグループを立ち上げたとされる。その後、フィリピンに移った。

 当時、詐欺の海外拠点が摘発されることはほとんどなかった。グループは、交流サイト(SNS)で、「闇バイト」「高収入」などとメンバーを募り、フィリピンに渡航させた。その後、規模は急拡大。場所が手狭になると拠点を移した。

◆「ホテルを買った。ここに住まわせよう」

 「ホテルを買った。ここに住まわせて、食事も作れば、誰も捕まらない」

 渡航してから約2年後。法廷で語った小島の証言によると、渡辺は、廃ホテルをローンを組むなどして、約12億円で取得したという。フィリピンの金融の中心地マカティ市の外れにあった。

 7階建てで、6階と7階にそれぞれ「A箱」「ST箱」と呼ばれるかけ子の拠点をつくった。それぞれの箱には、オーナーと呼ばれるトップがいた。A箱は渡辺で、ST箱は、渡辺の元部下で、グループから独立した「ミナミ」と呼ばれる男(34)=逃走中=だった。

 ホテルの拠点以外にも、今村がトップの「K箱」など、複数の拠点があった。「K箱やST箱は、同じグループというか、フランチャイズのような形。彼らの箱にも受け子を派遣していた」と小島は語る。

 2019年11月、ホテルのかけ子だけで計70人超に膨れ上がっていた。少なくとも月2億円超をだまし取っていたという。

 拠点が摘発された直前にも渡辺は、メンバーをねぎらい、セブ島旅行に連れて行くなどしていた。

◆きめ細かい「新人受け入れマニュアル」

 まるで会社のような組織だった。ホテルでは、新しく来たかけ子に注意点を記した「受け入れ書」を手渡した。

 取材で判明した新人受け入れ書によれば、

▽就業時間は、平日午前8時〜午後5時

▽報酬は毎週金曜日

▽電話やマニュアルは持ち出し厳禁

などと細かく指示した。

 2階には食堂を設置した。3〜5階は、かけ子の寝場所だった。組織で、だます相手を「客」と呼んだ。

 グループは全国にかけていた。朝礼で幹部がかける地域を発表。インターネット上に公開されている電話帳を印刷し配った。紙の右上に、管内の警察署名と電話番号を添えた。

◆1線、2線、3線の役割分担

 1線、2線、3線という担当に分かれていた。

 1線が、最寄りの警察署員を名乗り「先週逮捕された詐欺グループの容疑者が、あなたの口座情報を持っていた」と相手に話しかける。「だまされる人の特徴は、すぐに電話を切らず、話を聞いてくれる人」。服役を終えたある元メンバーは振り返る。

 話をつなぎ、カードの枚数や家族構成を聞き出していく。電話の相手が、キャッシュカードを2枚以上持っていると分かると、2線の金融庁の職員役につないだ。

「カードが偽造されて引き出されていた。被害者救済法でお金は取り戻せるが、申請が必要。これから職員(場合によっては警察官)が自宅に行く」などと伝えた。

 2線の会話を聞いていた3線が、待機する受け子に相手方に行くように指示。キャッシュカードの入った封書を相手の隙を見て、別のトランプなどのカードとすり替え、だまし取った。

◆偽の身分証は全国のコンビニで印刷できた

 グループは、画像編集ソフトで受け子の顔を入れた偽の身分証を事前に準備。受け子は、近くのコンビニのプリンターで、指示された予約番号を入れさえすれば、全国どこでも印刷できた。「客宅に着くまで、身分証はパンツの中に隠させた」とは小島の証言だ。

 特定の地域に集中的にかけるため、通報されることもあった。受け子のいる現場近くでパトカーや防災無線で注意喚起が流れ始めると「沸き電」と呼ばれる電話で、捜査を妨害した。

 「現場の隣町にわざと詐欺と分かる電話をかけ子10人で一斉にかけた。後は電話相手が通報してくれる。警察を沸かせた」(服役後のメンバー)

 すると、受け子の職務質問が切り上げられ、巡回中のパトカーがいなくなる例があったという。

◆引き出し限度額対策の「朝抜き」

 カードは、1日の引き出し限度額が決まっている。翌日も引き出すため工夫した。「朝抜き」と彼らは呼んだ。「心配な客は翌日以降、金融機関に問い合わせる。

『手続きに時間がかかる』と翌日も電話し、不安にさせないようにした」(同)。40日間連続で引き出したこともあったという。

 ホテルの摘発があった2019年11月、幹部らは逃走したが、その後拘束された。渡辺と小島は2021年、のちに広域強盗事件を起こしたとされる収容所に移送された。

 記者が小島と最後に面会した今夏、一連の事件について改めて尋ねた。強盗には反省を口にした一方、詐欺は違った。「後悔はない。被害者を知らないから感情移入できない」と困惑気味だった。

◆トクリュウ対策本部のきっかけになった組織

 警視庁では昨年10月、組織犯罪対策部を刑事部に統合させ「トクリュウ対策本部」を新設した。ある警察庁幹部は、念頭にルフィ事件があったと明かす。

 当時、ニセ電話詐欺グループが、殺人をするとは予期していなかった。別の警視庁幹部は「詐欺だけでなく、人を傷つける時代になった」と、危機感を募らせる。

「自分で手を汚さない幹部に反省の気持ちはないだろう」とも推察する。

 トクリュウ犯罪では、若年層の摘発が目立つ。「末端は使い捨て。身分証も押さえられ、家族も脅される。一度入ると抜け出せない」と、詐欺に加担する危険性を訴える。



◆デスクメモ

 トイレットペーパーの使い方まで書いた新人受け入れ書に食堂の設置や旅行のねぎらい。どこか新興企業の福利厚生のようで、人への危害もいとわない凶悪事件に帰結するギャップに驚く。若者が犯罪に加担する構造はどのように生まれたのか。11日からの被告の公判に注目したい。(恭)


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