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ロシアに敗北したNATO諸国の混乱がポーランドへも波及 《櫻井ジャーナル》 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/11/02 (Mon) 14:23:10

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202611020000/#goog_rewarded





 ポーランドの憲法裁判所がクーデター騒動で混乱している。警官隊が憲法裁判所の敷地内へ立ち入り、同裁判所のボグダン・シビエチコフスキ所長とその副所長に対し、アンナ・コルビン-ピョトロフスカ判事が1ヶ月間の職務停止処分が言い渡したようだ。西側を支配している寡頭勢力がしばしば使う手段がポーランドでも使われたということにほかならない。

 コルビン-ピョトロフスカは親EU派のドナルド・トゥスク首相から支持されている人物で、自分自身が憲法裁判所長代行に就任すると宣言した。セネガルへ向かっていたカロル・ナブロツキ大統領は急遽ワルシャワへ戻り、憲法裁判所の所長と共に警察の包囲網を突破、同裁判所の建物内へ入った。

 トゥスク首相の憲法裁判所に対する攻撃は彼が所属する「市民プラットフォーム(PO)」と敵対している「法と正義(PiS)」が政権を握って時代、ポーランドの主権を強化するために必要だとして行った司法制度の改革を無効にすることにある。PiSはEUによるポーランドへの干渉を批判、トゥスク首相は2014年12月から19年11月まで欧州理事会の議長を務めていた人物であり、EUの寡頭勢力と関係が深い。

 PiSに近いメディアはポーランド警察のトマシュ・ミフウカ副長官の署名があるとされる10月29日付けの文書を公開した。その文書が本物であるなら、ポーランド全土の地域警察本部長およびワルシャワ警察本部長が11月2日から8日にかけて警官隊を即時展開できる状態にしておくよう命じられていたことになる。

 西側の寡頭勢力、つまり帝国主義者は自分たちの権益にとって好ましくない状況が生じた場合、情報機関をはじめとするネットワークを動員して軌道の修正を図る。アメリカでそうした工作の中心にはCIAが存在しているが、そのCIAは1970年代の後半から情報統制やメディア支配を強化、メディアの資本規制が緩和されて所有者の寡占が進んだ。

 そして始まるのが「プロジェクト・デモクラシー」や「プロジェクト・トゥルース」。「民主主義」や「真実」というタグをつけて行う侵略、破壊、殺戮、略奪といった情報機関の秘密工作だ。ロナルド・レーガン政権時代にその仕組みが整備された。

 レーガン大統領は1983年1月にNSDD(国家安全保障決定指示)77に署名、プロジェクトの中枢機関としてSPG(特別計画グループ)をNSC(国家安全保障会議)の内部に設置した。ここが心理戦の中心になる。相手国の人々を偽情報で混乱させ、弱点を利用して操ろうというわけである。そして1983年11月にNED(国家民主主義基金)が創設された。(Robert Parry, “Secrecy & Privilege”, The Media Consortium, 2004)

 NEDへは国務省のUSAIDを含む政府の資金が流れ込んでいるが、その実態はCIAの工作資金を流すパイプ。NEDからNDI(国家民主国際問題研究所)、IRI(国際共和研究所)、CIPE(国際私企業センター)、国際労働連帯アメリカン・センターなどへ流れていく。アメリカ政府はNGO(非政府組織)を広めることに熱心だったが、その中にもCIAの手先として動いている組織が存在している。トゥスク首相の強硬策も西側では「民主主義のため」だとされるだろう。

 ポーランドは第2次世界大戦の前からイギリスの影響下にある国で、対ロシア/ソ連戦争の拠点として機能してきた。

 大戦後の1948年、ポーランドの秘密警察UBで幹部を務めていたヨゼフ・スビアトロ中佐がイギリスの対外情報機関MI6のマイケル・サリバン大尉に亡命を打診、その話はアメリカのイギリス大使館を介してアレン・ダレスに伝えられた。その当時、ダレスは情報機関から離れた民間の弁護士にすぎないことになっていたが、実態は違う。破壊工作の責任者だったのである。そのダレスを中心に練り上げられた工作が「スプリンター・ファクター」だ。コミュニストを分断するため、スビアトロの亡命を先送りにして、「ソ連圏のCIAネットワーク」なる物語をソ連政府に信じ込ませようとしたのだ。この工作は成功した。(Stewart Steven, “Operation Splinter Factor,” J. B. Lippincott, 1974)

 疑心暗鬼になったクレムリンは大規模な粛清を開始。問題のポーランド人が亡命してスプリンター・ファクターが終了した1953年12月まで作戦は続き、ソ連圏は分断された。その工作に騙されたヨシフ・スターリンは1953年3月に死亡、粛清を指揮したラヴレンチー・ベリヤは同年7月に解任され、12月に処刑された。この作戦により、ソ連や同盟国で次世代の指導者になると見られていた人びとは失脚し、コミュニスト政権の信頼は大きく損なわれた。

 1970年代に始まった対ロシア工作でもポーランドは重要な役割を演じている。

 1978年8月にローマ教皇パウロ6世が死亡した。この人物は1963年に教皇となったが、その前からCIAの大物、例えばアレン・ダレスやジェームズ・アングルトンと緊密な関係にあったことが知られている。

 パウロ6世の側近だったシカゴ出身のポール・マルチンクスは1971年にIOR、いわゆるバチカン銀行の総裁に就任。この時代にバチカン銀行を舞台として、債券偽造事件や不正融資事件が起こるが、いずれも非公然結社のP2が関係、アメリカ政府の東欧工作を支援していた。

 次の教皇に選ばれたアルビーノ・ルチャーニはヨハネ・パウロ1世を名乗る。新教皇は若い頃から社会的弱者の救済に熱心だった人物で、CIAとの関係はなかったと見られているが、就任してから1カ月余り後の1978年9月に急死した。今でも他殺説は消えていない。

 1977年頃にはイタリア銀行監督局のマリオ・サルチネッリ局長が銀行の調査を命令、78年4月になるとアンブロシアーノ銀行の調査が始まり、79年には関係者が殺されるなど捜査妨害が活発化する。その間、1978年10月にポーランド出身のカロル・ユゼフ・ボイティワが次の教皇となり、ヨハネ・パウロ2世と呼ばれるようになった。

 1981年3月にP2の頭目、リチオ・ジェッリの自宅や事務所が家宅捜索され、イタリアの情報機関、SISDEとSISMIの長官、ジュリオ・グラッシーニとジュゼッペ・サントビトを含むP2の会員リストが国家機密文書のコピーとともに発見された。P2は米英情報機関が操る「NATOの秘密部隊」、つまりグラディオと結びついていた。

 アンブロシアーノ銀行の頭取だったロベルト・カルビは1982年6月17日にロンドンで変死しているが、そのカルビは生前、アンブロシアーノ銀行経由で流れた不正融資の行き先はポーランドの反体制労組「連帯」だと家族や友人に話していた。

 アメリカのジャーナリスト、カール・バーンスタインによると、連帯が受け取った資金の出所はウィリアム・ケイシーCIA長官(当時)と関係が深い「民主主義のための愛国的援助」で、そこからバチカンや西側の労働組合などを介して流れたというのだ。

 連帯に送られたのは資金だけではなく、当時は珍しかったファクシミリのほか、印刷機械、送信機、電話、短波ラジオ、ビデオ・カメラ、コピー機、テレックス、コンピュータ、ワープロなどが数トン、ポーランドに密輸されたという。連帯の指導者だったレフ・ワレサも自伝の中で、戒厳令布告後に「書籍・新聞の自立出版所のネットワークが一気に拡大」したと認めている。連帯へ送られた資金の源泉はCIAで、NEDが利用されたほか、バチカンと西側諸国の労働組合の秘密口座から提供された。

 カルビが変死した1982年6月7日にレーガン大統領とヨハネ・パウロ2世がバチカン図書館で会い、50分間の大半をポーランドと東欧におけるソ連の支配に費やされ、両者はソ連の崩壊を早めるための秘密作戦を実行することで合意した。作戦の中心は言うまでもなくポーランドだ。その核になる団体が連帯にほかならない。1991年12月にソ連は消滅したが、ポーランドのネットワークは生きているだろう。

 そのネットワークはポーランドに留まらず、ウクライナへも伸びているはず。

 ルーマニアでは2024年12月に憲法裁判所が大統領選挙の第1回投票を無効とし、世論調査で「圧倒的な支持を集めていた」候補者を再投票から除外することを選挙管理委員会は25年3月に決定。フランスでは2025年3月、欧州議会の資金を横領したとして裁判所はマリーヌ・ル・ペンに有罪判決を下し、5年間の公職就任禁止を命じたが、この人物は27年の大統領選における最有力候補だった。その後、控訴裁判所は公職就任禁止期間を45カ月に短縮、選挙への出馬が可能になったが、今後、どうなるかは不明だ。ドイツでは2025年5月、連邦憲法擁護庁は、「ドイツのための選択肢(AfD)」を「確認された右派過激主義」政党と認定した。

 簡単に勝てると信じてNATO諸国はロシアに対する戦争を始めたが、敗北は決定的で、状況は悪化し続けている。第2次世界大戦終盤の日本と似ている。


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