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欧州は「対岸の火事」なのか? 政府と日銀がグルになって庶民苛め(日刊ゲンダイDIGITAL - 七転八起 Shichitenhakki

2026/10/31 (Sat) 22:32:19

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/395054





 政策金利を据え置いた植田日銀。物価も2%に到達とか言うが、狂乱物価に苦しむ庶民の悲鳴が聞こえないのか。あれやこれやで高市リフレ策を後押しする「金持ちのため」政府・日銀にインフレ加速と庶民の怒り爆発の懸念。

  ◇  ◇  ◇

 弱腰の植田総裁に、やはりサプライズはなかった。

 日銀は30日開いた金融政策決定会合で、政策金利を現状の1.25%程度に据え置いた。審議委員1人が1.5%程度への利上げを提案したが、反対多数で否決された。

 ちょうどFRB(米連邦準備制度理事会)とECB(欧州中央銀行)が揃って金利を据え置いたタイミングだけに、日銀が前回9月に続く追加利上げをすれば、日米金利差を縮め、円安是正につながるチャンスだった。日本の円安を嫌がるトランプ米国の“後押し”もあった。だが、株価急落や急激な円高につながるリスクを恐れ、植田総裁は踏み切れなかった。次の利上げは、12月が有力とみられる。

 大新聞が夕刊1面トップで報じたニュースとしては、日銀が目標としてきた「基調的な物価上昇率2%」に「到達した」と表明したことだ。

 第2次安倍政権下の黒田日銀総裁時代の2013年1月にこの目標を導入。アベノミクスの大規模な異次元緩和により、「2年程度で2%目標を達成する」と、デフレ脱却の方針を掲げたが、ズルズル先送りを繰り返した。14年越しでようやく到達し、「一つの節目だ」と植田は満足げだった。

 だが、そんなの喜ばしい話でも何でもない。メディアは「今後は2%水準で安定させる新たな局面に入る」などと書くが、ハッキリ言って今さらだ。

 現実の物価は、2022年に明確な上昇基調に入り、すでに2%に到達している。消費者は、もう4年も2%の物価上昇にさらされているのだ。それも、円安による輸入物価の上昇、中東情勢の影響によるエネルギー価格の高騰と、植田も決定会合後の会見で認めた「悪い物価上昇」である。

■矛盾だらけの植田総裁会見

 政府や日銀が目指してきた「物価上昇と賃金の増加による経済の好循環」にもほど遠い。実質賃金マイナスが長く続き、庶民感覚では物価上昇率は2%どころか、2ケタが実感。日銀の「生活意識に関するアンケート」調査では中央値で10%の上昇が続いている。

 経済評論家の斎藤満氏はこう言う。

「会見で植田氏は矛盾だらけの苦しい答弁を強いられました。物価は2%に到達した。これからは物価が上振れしないようにしなければならない、と『展望リポート』にも書いてあります。しかし、政策金利を1.25%に据え置いたので、2%の物価上昇率に比べれば『マイナス金利』です。つまり、まだ緩和的な水準で、インフレを促進してしまう。物価上振れリスクを考えたら、利上げを急ぐ必要がありました。もっとも、マーケットは『今の日銀に連続利上げなんてできっこない』と見ていたので、マーケットに利上げを織り込ませることができず、自業自得なのですがね。そもそも日銀の使う『基調的な物価上昇率』は現実の数字ではなく、概念的なもの。本当はずいぶん前に2%に達しているのに、高市政権が利上げを嫌がるので、まだ2%に達していないと恣意的に説明して利上げを遅らせてきたのです」

 トランプ米国が高市政権の「リフレ政策」にノーを突きつけたので、利上げできる環境になっただけで、日銀は相変わらず政府の顔色をうかがい、独立性が乏しい。だから「物価の番人」にもかかわらず、低金利策でインフレを促進してきた。高市政権の「責任ある積極財政」もインフレ促進策だ。政府・日銀でグルになって庶民イジメ。ひどいもんだ。

■インフレ刀を振り回し、ケガ人に税金で絆創膏

 それなのに、高市首相は口を開けば「日本はG7で物価上昇率が最も低い」と、まるで自分の政策が奏功しているかのような自画自賛だから呆れるしかない。その分、日本は欧米ほど給料が上がっていない。自慢できるような話じゃない。

 29日には、記者会見嫌いの高市が、官邸クラブの記者だけを集めて、モニターを使った“発表会”を開き、電気・ガス代補助の再開を表明した。昨冬より1カ月前倒しして12月~来年2月使用分に適用するとアピール。標準的な家庭で計7000円程度の負担軽減になるという。

「ガソリン補助金については、現在、1リットルあたり170円程度としている基準価格を、12月から毎月5円程度、段階的に引き上げる。ガソリン補助金の縮小が目立たないように、電気・ガス代補助の再開をセットで発表し、目くらまししたのだろう。高市首相らしいうまいやり方だ」(自民党中堅)

 制度設計が迷走している2年間限定の食料品の消費税減税もそうだが、こんな程度で国民が喜ぶものか。狂乱物価に苦しむ庶民の悲鳴が聞こえないのか。

 データは正直だ。

 内閣府が29日に発表した10月の「消費動向調査」。今後半年間の暮らし向きに関する意識を示す「消費者態度指数」は前月比0.4ポイントのマイナスと2カ月連続で下落した。総務省の最新の家計調査(8月分)でも、2人以上世帯の消費支出は前年同月比3.1%減と、9カ月連続のマイナスである。

 帝国データバンクによれば、11月の飲食料品の値上げは1477品目で、5カ月ぶりに2000品目を下回るものの、前年同月比では約10倍の規模だという。止まらない物価高に、庶民は財布のひもを固くして防衛するしかないのだ。

■物価高対策は「やってる感」

「年間5兆円をバラまく消費税減税もそうですが、高市政権の財政金融政策はインフレ促進策です。しかしその一方で、国民の不満を和らげるために電気・ガス代補助金のような『物価高対策』を取る。インフレという刀を振り回し、ケガ人が出ると絆創膏を貼って対策するようなものです。その絆創膏代も国民の税金ですよ。だったら、インフレをもたらす危険な刀を振り回さないようにすべきなのです。もっとも、そうした物価高対策は『やってる感』でしかない。高市政権は本質的には税収が増えるインフレをやめたくないのですから」(斎藤満氏)

 米国に怒られたからだろう、最近になって高市政権の閣僚らが「高市首相はリフレ派ではない」と積極的に発信している。しかし、やってることは紛れもなくインフレ助長のリフレ政策だ。この先も積極財政を続けたいから、30日に日銀が「2%到達」を表明しても、木原官房長官は「デフレ脱却宣言」に慎重だった。

「戦略17分野」への官民370兆円投資も、安保3文書改定にともなう防衛費の大幅増額も、大企業や防衛産業を潤す「金持ちのため」の政策だ。来年度予算は、過去最大の概算要求額143兆円から膨らむ見通しだ。一体、どこから財源を持ってくるのか。

 増税が視野に入っているのだろうが、だったら法人税や金融所得課税の引き上げに手をつけたらどうか。自民党は票田の大企業・富裕層に嫌がられることはなかなかやらない。結局、政府も日銀も庶民の方を向いていない。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏( 政治学)が言う。

「生活費の高騰を背景にした抗議デモが起きている欧州は、対岸の火事ではありません。日本の物価高は今に始まった話ではなく、上昇し続けてきているわけですから。しかもこの先も、原油高や円安にともなう輸入物価高は続く。それに対して、日本国民は欧州の人々のような形で異議申し立てをするのか、できるのか、ということが問われるだろうと思います」

 一体、いつまでこの物価高が続くのか。「物価上昇と賃金増加による好循環」なんてやって来るのか。庶民の怒りは沸々と湧いている。


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