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権力犯罪を暴くジャーナリストは「スパイ」に分類される時代 《櫻井ジャーナル》 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/10/30 (Fri) 15:04:47

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202610300000/





※転載元リンク箇所あり


 日本の「有識者」が10月26日、「外国による不当な干渉を防止するための法制度」を提案したという。日本には、これまでも「スパイ防止法」や「機密保護法」の制定を求める政治家は少なくなかった。

 イギリスのロンドン警視庁は2019年4月11日、WikiLeaksのジュリアン・アッサンジをエクアドル大使館の中で逮捕している。アメリカ政府の要請に基づくもので、同国の司法当局はアッサンジをハッキングのほか「1917年スパイ活動法」で起訴している。本ブログでは繰り返し書いてきたが、ハッキング容疑はでっち上げであることが明確。「1917年スパイ活動法」での起訴を目論んでいたのだ。アメリカへ引き渡された場合、アッサンジは懲役175年が言い渡される可能性があると言われていた。

 ​アッサンジ逮捕をアメリカの当局に決断させた要因のひとつは2010年の4月5日にWikiLeaksが公表した映像だと考えられている​。2007年7月にバグダッドでロイターの特派員2名を含む非武装の十数名をアメリカ軍の軍用ヘリコプターAH-64アパッチが銃撃、射殺する様子を撮影した映像だ。その映像を見れば、攻撃された人びとが武装しているようには見えず、ヘリコプターの乗組員が武装集団と誤認したとは考えられない。勿論、戦闘はなかった。

 WikiLeaksは内部告発を支援する活動をしてきた。その告発で自らの犯罪行為が明らかにされる人びとにとってWikiLeaksが行っていることは「スパイ行為」だということになる。だからこそ、WikiLeaksの象徴的な存在だったアッサンジは「1917年スパイ活動法」で起訴されることになったのだ。「権力犯罪」、つまり権力システムを動かしている私的権力に刃向かうならば、「スパイ」とみなされる。

 日本で議論されている「スパイ防止法」や「機密保護法」にしろ、アメリカに存在する「1917年スパイ活動法」にしろ、言論統制にほかならない。筆者が親しくしていた元特務機関員は1980年頃、どのような法律があろうと情報を取り、破壊活動を実行するのが情報機関員だしていた。「スパイを取り締まる」という口実で取り締まられるのは支配者にとって都合の悪い事実を明るみに出す人たちだ。

 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカの支配層は第2次世界大戦が終わって間もない頃から情報操作を目的とするプロジェクトを始めた。「モッキンバード」である。

 このプロジェクトをCIAで担当していたのはコード・メイヤーで、実際の活動を指揮していたのはアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだとされている。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979)

 グラハムは第2次世界大戦中、陸軍情報部に所属、中国で国民党を支援する活動に従事していた。その時の仲間のひとりがヘルムズ。そのほか後にCIA副長官になり、CSISの創設に関わったレイ・クライン、グアテマラのクーデターなどに参加し、ウォーターゲート事件で逮捕されたE・ハワード・ハント、そしてさまざまな秘密工作に関与し、駐韓米軍の司令官を務め、WACL(世界****連盟)の議長を務めたことジョン・シングローブも含まれる。

 ワシントン・ポスト紙の記者として「ウォーターゲート事件」を暴いたカール・バーンスタインはリチャード・ニクソン大統領が辞任した3年後の1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。

 その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したとバーンスタインにCIAの高官は語ったという。ニューズウィーク誌の編集者だったマルコム・ミュアは、責任ある立場にある全記者と緊密な関係をCIAは維持していたと思うと述べたとしている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)

 これは一般論だが、記者は新たな赴任先で前任者から情報源を伝達される。その赴任先が外国の場合、そうした情報源を紹介されないと記事を書くことが困難になるだろう。

 その場所がワシントンDCだった場合、紹介される少なからぬ情報源はCIAのエージェント、あるいはアセットだと言われている。そうした情報源はスクープを提供してくれることもあるが、そうした情報を得るためには情報源に従属する必要がある。報道できるかどうかはCIAが決めるということであり、報道内容はCIAに操作されることになる。それでもスクープできれば何らかの賞を授与され、社内で出世することになり、自分の仲間を増やしていくことになる。そうなるとメディア全体がCIAの手先ということになる。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権はガザを破壊、住民を大量虐殺してきた。​医学雑誌「ランセット」は2023年10月7日から24年6月30日までの間にガザで外傷によって死亡した人数は6万4260人と推計、そのうち女性、18歳未満、65歳以上が59.1%だとする論文を発表している。​

 また、​「ハーバード大学学長およびフェロー」のウェブサイト「データバース」に掲載されたヤコブ・ガルブの報告書では、イスラエル軍とハマスの戦闘が始まる前には約222万7000人だったガザの人口が現在は185万人に減少、つまり37万7000人が行方不明になっているとしている​。死亡者の約4割が子どもであり、女性を含めると約7割に達するという推計を採用すると、殺害された子どもの数は15万人だ。

 1982年1月、イスラエルの国防大臣を務めていたアリエル・シャロンはベイルートを極秘訪問、キリスト教勢力と会い、レバノンにイスラエルが軍事侵攻した際の段取りを決めた。1月の終わりにはペルシャ湾岸産油国の国防相が秘密裏に会合を開いている。イスラエルがレバノンへ軍事侵攻してPLOを破壊してもアラブ諸国は軍事行動をとらず、石油などでアメリカを制裁しないということで合意したと言われている。

 1982年9月にはレバノンにあったパレスチナ難民キャンプのサブラとシャティーラで虐殺事件が引き起こされた。殺害された難民の人数はイスラエル側によると700名、パレスチナ側によると2750名。その結果、イスラエルの責任を問う声がイギリス労働党の内部でも大きくなり、アメリカやイスラエルとの関係が悪化した。

 そうした状況を懸念したロナルド・レーガン大統領はアングロ・サクソン同盟の修復に乗り出す。メディア界の「大物」、ルパート・マードックとジェームズ・ゴールドスミスをホワイトハウスへ呼び出し、軍事や治安問題で一緒に仕事のできる「後継世代」について語ったのだ。

 その結果、組織されたのが「BAP(英米後継世代プロジェクト)」。イギリスで反米感情が高まっていることを危惧した米英両国のエリートが始めたプロジェクトである。メンバーにはBBC、フィナンシャル・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナルなど米英の大手メディアの関係者が多数参加している。欧米の権力層はメディアを取り込み始めたのだ。権力システムに取り込まれたメディアは権力犯罪を暴くことはなく、自分たちが参加しているBAPについても語らない。

 レーガン政権におけるメディア操作で中心的な役割を果た人物はウォルター・レイモンド。CIAのプロパガンダ担当オフィサーで1982年からNSC(国家安全保障会議)のスタッフになった。(Robert Parry, “Secrecy & Privilege”, The Media Consortium, 2004

 レーガン政権はイメージ戦争を開始する。民主的に選ばれた大統領に「****者」というタグをつけ、侵略のために送り込んだ傭兵に「自由の戦士」とか「民主化勢力」というタグをつけはじめ、その一方で報道統制を強化していく。1982年6月、イギリス下院の本会議でレーガン大統領は「プロジェクト・デモクラシー」という用語を公の席で初めて使ったが、この「デモクラシー」は本来の民主主義と無関係。プロジェクトの目的はアメリカの巨大資本にとって都合の悪い国家、体制を崩壊させることにある。いわゆるレジーム・チェンジ。国内での作戦は「プロジェクト・トゥルース」と名づけられた。

 事実を伝えたことで犯罪者扱いされているジャーナリストをアッサンジだけだと考えてはならない。そうしたジャーナリストを取り締まる最終兵器は「スパイ防止法」や「機密保護法」だ。


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