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高市が前のめりな情報機関設置「スパイごっこ」にならないよう…専門家たちの危惧や指(東京 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/10/30 (Fri) 11:29:56

高市政権が前のめりな情報機関設置 「スパイごっこ」にならないよう…専門家たちの危惧や指摘は:東京新聞デジタル
https://www.tokyo-np.co.jp/article/524851





 ドイツで、いわゆる「スパイ活動」を担う対外情報機関の元幹部が逮捕される事案があった。機密文書を取得し、外国の情報機関向けに分析した疑いがあるという。

 日本でも、高市政権が「対外情報庁」の設置を検討している最中だが、外交・安全保障の政策強化や戦争のリスク回避に本当に役立つのか。スパイ活動で「素人」同然の日本の情報機関が、他国からの干渉を受ける可能性はないのか。(坂田奈央、松島京太)

◆ドイツの情報機関で情報漏えい事件か

 ロイター通信などの報道によると、ドイツの対外情報機関・連邦情報局(BND)のアウグスト・ハニング元長官が6日、ドイツ検察当局にスパイ容疑などで逮捕された。

 逮捕したのはテロやスパイ事件を担当する連邦検察庁。ハニング氏は、対価を支払って機密文書を入手し、外国情報機関向けの分析に利用した疑い。どの外国情報機関かは特定されておらず、分析が実際に相手の方に渡ったかどうかも現時点で不明とされる。

 報道では、ハニング氏は2005年まで7年間にわたってBND長官を務めた。退任後の10年、BND長官室の元責任者から報酬と引き換えに機密情報の提供を受ける合意をしたという。

 この元責任者は今年3月まで長官室の責任者を務めていた。ドイツの最新機密情報の一部にアクセスできた可能性があり、長年にわたって約2000件の文書を提供した疑いがあるとしている。

◆前身は第2次世界大戦中の諜報機関

 BNDはどんな組織なのか。

 国立国会図書館の調査資料などによれば、ドイツの外交・安保政策で重要な外国に関する情報を収集・分析し、連邦政府に報告する任務を担う。その一環として、ドイツ国内で国外の外国人の通信情報を収集している。

 第2次世界大戦中にドイツ国防軍で対旧ソ連の諜報(ちょうほう)活動に携わったラインハルト・ゲーレンが、米軍の支援を受けて1946年に設置した諜報機関が前身という。

 大戦後、分断された旧西ドイツが東西冷戦の最前線となり、旧ソ連や東欧諸国に関する情報収集や、浸透工作を防ぐための西側陣営の要となったことで、1956年には正式な国家機関としてBNDに改組された。

 欧州の政治に詳しい専門家の一人は、BNDについて「ドイツも日本と同様に情報収集活動への制約が多く、英秘密情報局(MI6)などのレベルには達していない。これから強化しようとしていたところに起きた事件」と評した。

◆「ドイツだから」じゃない、日本でも起こり得る課題

 旧西ドイツは、旧ソ連や旧東ドイツなど当時の共産圏の干渉にさらされた歴史を持つが、固有の要因もあるのだろうか。

 筑波大の東野篤子教授(国際関係論)は「『ドイツだから』起きた話ではない」と話す。「ロシアとの関係自体は無視できないが、こうしたことは日本でも起こり得る。あくまで情報の扱いやインテリジェンス体制に対する重大な課題と捉えるべきだ」とした。

 その上で、東野氏は「どの国も抱えるインテリジェンスのインサイダースレット(内部者の脅威)が如実に表れた例で、情報管理がいかに難しいかを改めて突きつけた」と指摘。「元長官とその側近との個人的な信頼関係も絡んでいたとみられ、対外情報機関の元長官が外国に買収されたという単純な構図ではない。特定人物を排除して解決する話ではなく、氷山の一角かもしれない」と危惧した。

 対外情報機関の設置を目指す日本も対岸の火事ではない。

 東野氏は「日本は『つくるか否か』という単純な議論になりがちだが、集約した情報をいかに守るか、組織内・省庁横断的なアクセスの管理や厳格なルールをどう設計するかが問われる」と訴える。

◆今夏発足「国家情報局」は改革の第一歩

 日本では高市政権が、国内外でのスパイ活動を進めるための対外情報機関の設置に向けて、前のめりな姿勢を見せる。

 7月末には、政府のインテリジェンス政策の司令塔としての「国家情報会議」や、事務局の「国家情報局」を発足させた。だが、高市早苗首相は「インテリジェンス改革の第一歩にすぎない」との立場で、さらなる体制強化を図る構えだ。

 自民党と日本維新の会の連立合意では、2027年度末までに独立した「対外情報庁」を創設すると明記されている。政府は9月に開催した有識者会議の初会合で、情報収集機能の強化も含めて議論した。高市首相は「国民の安全や国益を守り抜くため、わが国の情報力の強化が不可欠だ」と強調。「対外情報機能の充実」を重要項目の一つに挙げた。

 なぜ高市政権がそこまで対外情報機関の設置にこだわるのか。インテリジェンス分野に詳しい日本大の小谷賢教授(国際政治学)は「そもそも日本による海外での情報収集活動は、他国の情報機関と比べて後手に回ってきた」と解説する。

 小谷氏は「これまで海外情報収集をしてきたのは主に外務省だったため、外交情報以外は集まりにくかった。最近で言えば北海道新聞の記者がロシアで拘束されたが、公式情報を待つばかりだ。拘束された詳しい事情を裏で聞けるような組織はなかった」と説明する。

◆これまでアメリカに頼りっ放し…でも今は

 日本政府の中に、海外で積極的に情報を収集する組織がなかった理由については「外交方針も情報収集活動も米国に頼りっ放しだった。ただ、最近のトランプ政権の動向は不安定なため、日本が独自に対外情報を集める組織をつくる必要が高まっており、基本的には賛成だ」と語る。

 一方で、小谷氏は対外情報庁の設置に向けた「壁」についても指摘する。「民間人の肩書で海外で情報収集活動をすると、現地の当局に捕まる危険性がある。そうなった場合、米国などではスパイ交換で身柄の返還を要求するが、日本の刑法ではそのような仕組みがない。このままでは海外活動のリスクが高い」

 人材的な課題に関しては「外国語が堪能で現地で信頼関係を築けるような有望な人材が必要となってくるが、簡単に確保できるとは思えない」と説く。

 さらには「海外で暗殺や外交的な緊張関係を高める活動を勝手に実施しないために、国会による監視の権限を高める必要もある。議論として煮詰まっていないことがあまりにも多い。連立合意では『2027年度末までの創設』と言うが、期限を設けずに慎重に議論を進めるべきだ」と提言する。

◆すぐにCIAのような組織ができるわけじゃない

 国際ジャーナリストの春名幹男氏は、インテリジェンス機能の強化を急ぐ高市首相の姿勢について「対外情報庁をつくれば、米中央情報局(CIA)のような組織ができると思っているのかもしれないが、そんなに簡単なものではない。本当にインテリジェンス機能を強化したいのではなく、組織の看板だけつくって支持者向けのアピールがしたいだけなのではないか。理念だけ先行する形で組織をつくっても、ドイツの例のように逆に情報を漏洩(ろうえい)させるリスクを招くだけだ」と疑念の目を向ける。

 これまでの日本の対外情報収集活動についても「報道などの公開情報も正確に分析できていなかった。そうでなければ、尖閣諸島の国有化や(高市首相の)台湾有事発言で中国をいたずらに挑発することにはならなかったのではないか」と断じる。

 その上で「CIAでも公開情報の分析が8割を占めている。人を介して情報を集めるのは重要だが、それ以前の準備が全くできていない。このままでは『スパイごっこがしたいだけ』と言われても反論できないだろう」と揶揄(やゆ)した。



◆デスクメモ

 国のあらゆる政策は、市民の安全や幸福に結び付くべきだ。非合法の要素も排除しないスパイの解禁が、そうした目的にかなうのか。クーデターや戦乱は、対外情報機関の動きが引き金となる。日本が生半可に「スパイ戦」に関与した結果、市民を危険にさらすのでは話にならない。(政)


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