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「戦前の反省どこへ」次期戦闘機開発、ドローン増産、造船再興…防衛関連産業の活況、(東京 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/10/25 (Sun) 11:41:31

「戦前の反省どこへ」次期戦闘機開発、ドローン増産、造船再興…防衛関連産業の活況、その先にある不安:東京新聞デジタル
https://www.tokyo-np.co.jp/article/523759





 防衛関連産業が活況を呈している。政府の後押しを受け、国内各地では次期戦闘機の開発や防衛用ドローンの生産、造船能力の増強の動きが進む。だが、有事に攻撃目標になり得る開発拠点や工場周辺の住民らに説明を尽くそうとする姿勢は見られない。識者は、なし崩し的に進みつつある防衛関連産業の「戦前回帰」に向けた動きに警鐘を鳴らしている。(佐藤裕介)

◆有事になれば…軍需工場隣接地で膨らむ不安

 「次期戦闘機をここで造るとなれば攻撃目標になるのは間違いないのに、国や企業からは今のところ何の説明もなされていない」

 三菱重工業の小牧南工場(愛知県豊山町)の近くに住む坪井由実さん(76)は有事の際に住民が巻き添えになる事態を懸念しているという。

 同工場は県営名古屋空港と隣接し、航空自衛隊小牧基地も近い。主力戦闘機F35Aを組み立ててきたノウハウがあり、日本が英国やイタリアと共同で進める次期戦闘機開発の主要な拠点となる見通しだ。

 坪井さんは「豊山町民の生活と健康を守る会」の共同代表を務める。町内にある豊山配水場の井戸水から発がん性が疑われる有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」が検出された問題の原因を究明する活動にあたってきたが、「戦争となれば、自衛隊員も大企業の社員も住民も関係なく攻撃されて犠牲になる恐れがある。まさに住民の命に関わる問題だ」と訴える。

 坪井さんによると、坪井さんの父親は戦時中、軍が主導した現在の県営名古屋空港周辺で滑走路などといった軍施設の建設工事に従事。周辺では軍施設を狙ったとみられる空襲があり、一般市民が犠牲になったという。

◆高市政権への不信「外交や対話の努力を怠っているのでは」

 高市早苗政権は、台湾有事を念頭に中国との関係悪化をいとわないように映るが、坪井さんは「今の政府は戦前回帰のような動きをしている。軍備増強ありきで、外交や対話の努力を怠っているように感じる」と危ぶむ。
 戦闘機のような従来型の装備品に加え、防衛用ドローンの開発・生産に向けた動きもある。小泉進次郎防衛相は5月、愛知県にある三菱重工の施設を訪問。この際に自身の交流サイト(SNS)に紹介した写真には同社のドローンとみられる複数の機体が写っていた。


 2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻ではウクライナ軍が偵察型や攻撃型といった各種のドローンを駆使。防衛省も大量のドローンで敵軍を阻止する

「SHIELD(シールド)構想」を進めており、2030年までに年間8万台のドローンを生産できる体制の確立を目標にする。

 愛知県では「プロドローン」(名古屋市)が9月、防衛装備を手がける豊和工業(愛知県清須市)の本社敷地内にドローン量産工場を整備すると発表。国の補助金も活用して物流や点検用などのドローンを生産し、2029年3月には年間5万8000機の生産を想定する。

◆物流、点検用のドローン増産、次にくるのは…

 将来的には防衛用の生産も視野に入れるが、同社本社から2キロほど離れた清須市内に住む関久一さん(75)は「市民に十分な説明がないのはおかしい。工場はターゲットになり市民が巻き添えになるのは目に見えている」と懸念する。


 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、世界の軍需企業の2024年販売額の上位100社に入った日本企業の販売額の合計は前年比40%増の133億ドル(約2兆円)。100社入りした国内企業は5社で三菱重工は32位に入った。政府の防衛力増強の追い風を受ける主要各社の業績は好調で、今後も各地で関連設備の増強や機能強化に向けた投資が続く見通しだ。

◆政府は船舶建造量を2倍に引き上げる「再興」方針を掲げる

 自衛艦の建造や米軍艦船の修繕などに関わる造船業の「再興」に向けた動きも各地で相次ぐ。

 国土交通省などによれば、かつて日本の船舶建造量は世界首位を誇ったが、中韓に追い抜かれ、2024年の船舶受注量は中国の71%や韓国の14%と比べて日本は8%と低迷している。

 造船業の再興を狙う政府は2025年度に「造船業再生基金」を創設。建造能力を増強する企業を支援し、造船業の年間建造量を2035年をめどに2025年の約2倍に引き上げる方針を示した。

 政府の後押しを受ける形で民間も設備増強の方針を打ち出す。三菱重工は、休眠状態だった岡山県内の造船設備を再稼働させるほか、今月2日にはグループ会社の建造能力拡大に向けて1000億円を投資し、国から400億円の助成を受けると公表した。

◆「造船や海運と戦争の間には、切っても切れない関係がある」

 一連の動きについて、海軍史に詳しい呉市海事歴史科学館「大和ミュージアム」(広島県呉市)の戸高一成館長は「造船や海運と戦争の間には、切っても切れない関係がある」と指摘。国内に十分な石油や食料などの資源がない日本では「長年にわたり民間の船も含めた輸送船による海上交通路(シーレーン)の確保が死活的に重要だとみなされてきた」と話す。

 一方、全国の民間の船員らでつくる全日本海員組合(東京都)の立川博行中央執行委員は「民間の船員や船舶を『徴用』に類似するような形で有事に利用しようとすることは容認できない」と強調する。

 民間の船員が大きな犠牲を払った先の大戦の教訓から、組合は戦後に「海員不戦の誓い」を立て、民間船員が戦場に「行かない、行かせない」(同組合の平岡英彦中央執行委員)ということを重要な活動方針としてきた。

 公益財団法人「日本殉職船員顕彰会」によると、戦時中に軍に徴用され、米軍などの攻撃で失われた民間船舶は漁船や機帆船を含めると約7200隻。死亡した船員は6万人超にのぼる。日本は日米開戦後の1942年に戦時海運管理令を公布し、民間の船舶や船員を国家の管理下に置いて徴用。その結果として起きた悲劇だった。

 2016年に民間の船員を予備自衛官補として有事に活用する防衛省の計画が浮上した際、組合は「事実上の徴用だ」などとして反対を表明。計画は報道で知り、政府や防衛省から事前の説明や相談などはなかったという。

 立川氏は当時を振り返りながら「説明をしっかりしようという姿勢は感じられなかった」と話す。

 先の戸高氏は、戦前は国が補助金を出して戦時の軍艦への改造を前提とする形の船舶を建造したと指摘。実際、戦時中は複数の貨客船などの民間船が空母や仮装巡洋艦などに改造されて対米戦に投入されている。

 安全保障政策に詳しいジャーナリストの布施祐仁氏は現在の造船業の動きについて、護衛艦の輸出解禁などが進む状況も踏まえ「軍事的需要への対応色が極めて強い」とみる。

 工場周辺の住民や民間への説明が乏しい点については「不安や反対運動の強まりを懸念し、住民などとの直接対話を回避しようとしているのではないか」と強調。政府が急速に防衛関連産業の強化を図っていることには「戦前の反省に立った平和国家としてのあり方を放棄しようとしているように見える」と話す。
 立命館アジア太平洋大の綛田(かせだ)芳憲教授(国際政治学)は、高市早苗首相の台湾有事発言や一連の防衛産業の強化を踏まえ「自ら中国やロシアとの緊張を高めているような印象を受ける」と指摘。「安全保障環境が戦後最も厳しく複雑なのであれば、緊張緩和に向けた積極的外交がなおさら必要である」としている。



◆デスクメモ

 横浜・山下公園のシンボルといえる氷川丸。港に浮かぶ美しい姿から、戦時徴用の惨劇を思い浮かべるのは難しい。戦後81年を過ぎ、「新しい戦前」との言葉もあるが、生活を支える船舶が再び戦争に使われることはないのだろうか。高市首相には日本の不戦の決意を貫いてほしい。(せ)


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