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埋没しつつある日本を立て直すには…日本総研会長・寺島実郎さんが訴える「新たな民主(東京 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/10/18 (Sun) 23:04:42

埋没しつつある日本を立て直すには…日本総研会長・寺島実郎さんが訴える「新たな民主主義」とは:東京新聞デジタル
https://www.tokyo-np.co.jp/article/522226





〈言わねばならないこと〉 「力こそ正義」なのか
 大国の「力」に、「協調」や「平和」を追求してきた戦後の世界が揺れています。未来へ希望をつなぐ知恵はどこに。多くの人々の「言わねばならないこと」を通して考えます。

  ◇  ◇

◆米中が見る「日米安保」、日本の認識と大きなずれ

 日本の埋没が加速している。21世紀初頭に世界の国内総生産(GDP)の15%を占めた日本の比重は、2025年に3%台まで落ちた。経済の埋没は政治の埋没に相関する。それを象徴したのが9月の日米、米中首脳会談だった。

 高市早苗首相がファーストネームで呼び合う外交の幻想を引きずり首脳会談で「ドナルド」と呼びかけるのに対し、米国のトランプ大統領は首相の名前すら記憶していなかった。
 他方、中国には「第2次世界大戦期の同盟」にまで言及し、協調を印象づけた。日中の意思疎通が1年にわたり遮断される一方、米中は交渉の密度を深めている。
 同月下旬、米ワシントンを訪れ、東アジア政策の関係者と多く面談した。日本の軍国主義復活をことさら懸念してみせる中国に対し、米国側は、日米安保こそ日本の軍国主義を抑え込む「瓶のふた」であり、首都圏にまで米軍を配置するのは米中の暗黙の共通利益だと言及した。日米安保は「中国の脅威から国を守るために機能している」という日本側の認識とは、大きなずれがある。

◆日本の立ち位置を強めるために最も重視すべきは

 トランプ政権の米国は多国間協調や法の支配という世界秩序から離脱し「力こそ正義」「カネがすべて」という原則に回帰している。日本は21世紀の世界秩序における自らの役割を自覚し、外交の再設計を試みるべきだ。
 重視すべき価値は非核平和原則であり、国際刑事裁判所(ICC)問題に象徴される法の支配であり、多国間協調だ。日本はICCを財政面で支え、赤根智子氏が所長を務めるが、米国への配慮が先に立ち、世界秩序への役割意識が欠けている。

 米国、中国との関係で日本の立ち位置を強めるために最も重視すべきは、東南アジア、インド、南西アジアなどアジア諸国との信頼、協調関係の構築だ。
 今年1~6月期の貿易は米国向けが約15%なのに対し、中国は23%、中国を除くアジア全体で約3割に上る。アジアと深く結び付いているのに、日中関係を打開する構想が見えない。米国が日本を軽視し始めた大きな要因は、日本がアジアでの影響力を失っていることにある。
 ウクライナ侵攻の長期化に中東情勢の混迷が重なる。イランのアラグチ外相は駐日大使時代、核の平和利用で国際社会に認められている日本のような国を目指したい、との考えを示していた。日本は1979年のイラン革命後も外交を維持してきた数少ない国として、米国とイランの間に立てる独自の外交資産を生かすべきではないか。

◆円の力は下がり続け…いつの間にか「アジア最弱通貨」

 経済で埋没しつつある中、直視すべきは「ジャパン・リスク」。その象徴が円安と金融政策だ。1ドル=160円台の円安を抑えるため今年4月と7月、月末から月初めにかけて、累計27兆円を超す為替介入が行われた。
 日本の原油輸入価格は6月に1バレル=116ドル台まで上昇し、円換算で前年平均比で約67%高騰した。原油高と円安が同時に進めば、成長率がマイナスに転落しかねないという予測もある。

 米国が円安対策で「協調」に動いた理由はそれだけではない。日本は世界最大の約1兆1000億ドルの米国債を保有する。
 一方、中国は保有額をピーク時からほぼ半分まで減らした。日本が介入資金を得るため米国債を大量に売れば、米国の金利や金融市場にも影響しかねない。米財務長官の要求を受け、日本が保有する米国債を売らないと約束する代わりに、日米協調介入を演出したのだろう。
 日銀の政策金利の追加引き上げも、この「外圧」の延長線上にあると考える。日本の金融財政政策は、米国の思惑の中で金縛りになっている。
 円の実力は下がり続けている。2012年の為替平均は1ドル=79円となったが、今は中国人民元やシンガポールドル、タイバーツ、台湾ドルに対して軒並み4割近く下落し、「アジア最弱通貨」とも言われている。
 対ドルでの価値はこの十数年でほぼ半減した。為替は長期的にはその国の産業力を映す鏡であり、水準そのものが日本経済の地盤沈下を物語っている。

 金利のある時代に戻った。2027年度予算の概算要求は143兆円を超え、国債費は過去最大の約36兆円、うち利払い費だけで約16兆円に上る。高市政権は「責任ある積極財政」を掲げるが、利払い費の圧迫で財政余力は狭まり、政策は硬直化しつつある。利払いが政策を縛る現実を直視すべきだ。

◆「政治に過度な期待を抱くのはやめるべき」

 企業業績や株価だけを見れば経済は好調のように映る。だが海外事業の利益が円安で膨らみ、値上げが売上高を押し上げたに過ぎない。鉄鋼やセメント生産量などにあらわれる産業力の落ち込みは大きい。
 くらしでは格差と貧困が拡大している。少額投資非課税制度(NISA)が普及し、利用者は3000万人に迫る。円安・株高で潤う層がいる一方、金融資産をほとんど持たない人は物価高が重くのしかかる。

 学生までもがスマートフォンで投資運用をするような状況で、日々の値動きに一喜一憂し、目先の個人資産の増減ばかりに関心が向く。この社会心理がポピュリズム政治の土壌になっている。実はこれが、易きに流れる日本の埋没を招いているのだ。
 政治に過度な期待を抱くのはやめるべきだ。必要なのは国民、特に若者や高齢者が社会課題の解決に参加する仕組みだ。若者が地域貢献や海外協力など公共性の高い事業に汗を流した経験を、企業が正当なキャリアとして評価する場を作る。
 元気な高齢者にも、地域を支えながら、年金に上乗せする報酬を得られる場を整える。こうした社会工学的な基盤づくりの財源には、企業の内部留保など民間資金も活用する仕組みを構築すべきだ。
 国に何かをしてもらうことを期待する民主主義から、国民自身が主体的に社会を支える民主主義への転換が必要だ。日本がどんな国であるべきかを一人一人が考え、行動する。埋没しつつある日本を立て直す出発点はそこにある。





寺島実郎(てらしま・じつろう) 1947年生まれ。三井物産などを経て現在は多摩大学長も。「サンデーモーニング」などに出演。近著「歴史の条理に立つ勇気と構想」

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