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突かれる迷走高市外交…拘束された北海道新聞の記者は帰ってくるのか(日刊ゲンダイDIGITAL - 七転八起 Shichitenhakki

2026/10/17 (Sat) 23:01:41

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/394367





 なぜ、このタイミングだったのか。戻ってくるのか。唐突な北海道新聞記者の拘束は脇が甘いくせにタカ派を気取る高市外交の問題点を改めて浮き彫りにしていないか。こぶしを振り上げるだけの外交、インテリジェンスの弱さ、そのくせ、対外情報庁などと意気込む危うさを専門家はこう指摘。

  ◇  ◇  ◇

 今週は世紀のチンピラ大臣、簗前農相が「辞める」「辞めない」でバカ騒ぎだったが、その陰で、高市首相の頭は別のことでパニックになっていたかもしれない。北海道新聞の記者がロシア当局に拘束、起訴された一件だ。

 ロシア連邦保安局(FSB)は13日、ロシアの国防能力に関する情報を収集した疑いで、日本人記者をサハリン州で拘束、モスクワに移送したと発表した。ロシア国営テレビは、記者が床に転がされ、黒い制服を着た覆面姿の3人に手錠をかけられる映像も放映。その際、スパイ容疑であると告げる音声が聞こえ、拘束された男性が「スパイ? どういう意味?」と戸惑う声も流された。

 畳みかけるようにロシア外務省のザハロワ報道官は「わが国の安全保障を損なう目的で、特派員を利用して情報を収集する日本の試みは遺憾だ」と批判、「今日の事件は唯一ではない」と次の拘束を示唆するような脅しをかけたのである。

 これがいかに衝撃だったか。大手新聞社の特派員経験者はこう話す。

「共同通信でも2019年にウラジオストクで記者が一時拘束されたが、翌日出国した。今回はスパイ容疑ですぐ、モスクワへ移送され、2カ月の勾留が決まった。その後、裁判で有罪になれば、10年、20年の刑になる。脅しや警告であれば、記者資格と在留許可を取り消し、国外追放にして、以後、入国禁止にすればいい。実際、ロシアは25年11月、学者や新聞記者ら約30人の入国を禁止した。今回はそれをはるかに超える強硬措置で、特派員はパニックになっています」

■相手の顔色をうかがう恐る恐るの抗議

 記者の間で不安が広がるのも無理はない。こういう時に日本政府はてんで頼りにならないからだ。

 今回だって、高市政権は「簗問題」にかまけていたのか、対応が後手後手だった。スパイ容疑について、すぐに否定、抗議の声明を出すでもなく、高市が記者に聞かれて、ようやく答える形となった。

 外務省の中村仁威欧州局長はノズドレフ駐日ロシア大使を呼び出し、人道的対応を要請、拘束事実を日本に知らせる「領事通報」がなかったことに抗議したとされるが、「そこかよ!」と言いたくなる。閣僚からの発言も「状況を調査中」「邦人保護に万全を期す」みたいなことばかりで、刺激しないように相手の顔色をうかがっているのがミエミエだった。この記者が本当にスパイ活動をしていたのであればまだしも、北海道新聞は「政府の指示に基づいて取材や情報収集を行うことはない」(山本武史編集局長)と明確に否定している。

 これには自民党の外交部会でも「スパイ容疑を明確に否定する発信が必要だった」という不満が噴出したというのである。

 高市は昨日(16日)の国会答弁で、「危機管理は24時間」みたいなことを言って“自慢”していたが、そう言っているそばから、甘さが透けて見える。

 実際、今年1月、イランに拘束されたNHKのテヘラン支局長も保釈されたものの、出国が認められず、いまだに帰国できていない。中国で拘束されている日本人はワンサカいるし、拉致問題は一歩も動かず、やっているふり。これじゃあ、特派員の海外赴任は命がけになってしまう。


■日本は「脅せばなびく」とナメられている

 大体、ロシア側がこのタイミングで、記者を拘束した理由は明白だ。

 今月2日、日本は対ロ追加制裁として、ロシア産原油を運搬する「影の船団」や軍事関連企業を対象にした資産凍結を実施すると発表した。また、国際ハッカー集団の中心メンバーであるロシア人の身柄をドイツに引き渡し、これもロシアを刺激した。ザハロワ報道官は「日本の非友好的な態度に対し、相応の対抗措置をなしに済ませない」とすごんでいたのだ。それでなくても、日ロ関係はウクライナ戦争後、急激に悪化している。今年8月にはプーチン大統領が初めて北方領土の択捉島を訪れ、高市をいきり立たせたばかりだ。

 と思ったら、トランプ米大統領は今月9日、プーチンと電話会談。ロシアの軽油を米国や世界に供給することで合意した。これにはウクライナを筆頭に欧州も猛反発していたが、その直後に日本人記者がやられたのである。

 プーチンがここぞとばかりに揺さぶりに出たのは間違いない。元時事通信モスクワ支局長の名越健郎氏(拓殖大客員教授)はこう言った。

「一連の流れや、今度の拘束の様子を動画で流すあたり、周到に準備した対日圧力であるのは間違いないと思います。10月19日は日ロ共同宣言70周年ですが、おかまいなしに強硬路線を取ってきた。ロシアにしてみれば、トランプ大統領は懐柔に成功した。日本は脅せば譲歩する、とみているのでしょう。今後はウクライナ支援を阻止するべく、動いてくる。かといって、日本はウクライナ支援を引っ込めたら、国際的な信用を失ってしまう。欧州は囚人交換などができるが、日本にはそうしたカードもない。戦争が続く限り、解放の交渉は難しく、拘束は長引くかもしれません。それにしても、外務省はこうした緊迫情報を官邸含め、情報発信していたのでしょうか。外務省改革も待ったなしです」

 一刻も早い記者の解放を求めたいが、実はお手上げだということだ。

■やみくもにインテリジェンス強化に走り出す危うさ

 それなのに、高市政権は「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」などといい気になり、インテリジェンス強化をうたっている。内調、公安調査庁などを一元化する国家情報局をつくり、さらにはスパイ防止法を視野に、対外情報庁設置にもシャカリキだ。

 いまでも内調や公安調査庁の役人は平気で新聞記者にすり寄ってくる。接触を持った記者がロシアや中国でスパイ扱いされたら助けてくれるのか。その術もないのだから、記者は見殺しにされてしまう。

 足元を固めないままタカ派外交を振りかざし、軽々にインテリジェンス強化、スパイ防止に走り出している高市政権はあまりにも危ない。それが垣間見えた北海道新聞記者の拘束事件ではなかったか。

 共同通信OBでインテリジェンスに詳しい春名幹男氏もこう言った。

「国際情勢がかくも混沌とする中、日本は明確な外交スタンスを打ち出せない状況です。米国がウクライナ支援に距離を置き始めた今、日本は忖度し、ゼレンスキー大統領にも武器輸出で落胆され、プーチン大統領にはそこを突かれ、揺さぶられている。政権がかくもグラグラなのに、高度なインテリジェンスを担うヒューミント活動ができるのでしょうか。今度の事件でも官邸や外務省が何か積極的に動いたのか。何もやっていないし、できないのに、インテリジェンス強化などを言っても、他国から警戒され、拘束される懸念が高まるだけです。机上でインテリジェンス強化を訴え、タカ派のふりだけの高市政権の路線が国益にかなうとは思えません」

 世紀のハレンチ大臣を平然と任命しただけでなく、あらゆる意味で、口だけ高市政権の限界が露呈しつつある。今度の拘束事件は人命がかかっているだけに、「やっているふり」や媚態外交では済まされない。


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