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分断の時代に日本ができる国際社会への恩返し…津山恵子さんが思う真の「美しい国」(東京 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/10/12 (Mon) 11:40:16

分断の時代に日本ができる国際社会への恩返し…ジャーナリスト津山恵子さんが思う真の「美しい国」:東京新聞デジタル
https://www.tokyo-np.co.jp/article/511445





〈言わねばならないこと〉 「力こそ正義」なのか

 大国の「力」に、「協調」や「平和」を追求してきた戦後の世界が揺れています。未来へ希望をつなぐ知恵はどこに。多くの人々の「言わねばならないこと」を通して考えます。

  ◇  ◇

◆トランプ政権が世界に植え付けた「自国ファースト」の意味合い

 今年、米国は激動の年になりました。ベネズエラやグリーンランド、そしてイラン。7月のサッカー・ワールドカップでは政治介入もありました。社会不安を煽(あお)る出来事が短いスパンで起きています。イラン問題では一般的な市民にも反戦ムードが広がっています。20年続いたアフガニスタン侵攻と今回のイランとで4000人超の米兵が犠牲になっています。トランプ大統領は「戦争は絶対にやらない」と公約し、信じた大勢の若い人たちが投票したのに、こういう事態が起きてしまいました。

 彼の最大の公約である不法移民の駆逐では、報道ベースでは昨年1年間で米国市民も170人が拘束されています。米国で生まれた人、グリーンカード(永住権)を取得した移民、学生ビザで勉強に来ている人まで。狙われるのは非白人で、私たちアジア人も例外ではありません。ICE(アイス、移民・関税執行局)の捜査官がいきなり来て、病院の駐車場から誰かを連れて行ったり、学校の門のところで拘束したり。いつ捕まるのか、非白人系市民は恐怖を感じています。

 トランプ政権は「〇〇ファースト」という概念を世界に植え付けました。高市早苗首相も「ジャパン・ファースト」と言いましたが、国益を守る意味では義務であり責任です。でもトランプ型の「ファースト」はそれとは少し違い、自己中心的です。関税問題も、DEI(ディー・イー・アイ)、つまり「多様性」の撤廃もそう。米国内の企業は多様な背景を持つ人たちを採用しない、できないようになってきています。大学などからの「頭脳流出」や、日本や中東など「異文化」の研究をやめる動きも始まっています。多様さの排除は排外主義にもつながり、本当に一部の白人富裕層だけが優遇されている。

◆海外で尊敬されている日本

 日本でも「内向き」志向の強まりを感じます。日本に長く住む外国人に話を聞くと、最近はあいさつしても誰も答えてくれないそうです。日本が大好きで、長年住んだ末に日本国籍を取った米国人女性は交流サイト(SNS)で「日本人ではなく日本国籍人だ」と攻撃されています。日本の書店に普通に置いてある「嫌韓本」「嫌中本」は米国では多分、人権問題で書店が訴えられます。でも日本では平気で売っている。非常に危険な状況と思います。

 米国は極端に振れてしまいましたが、「民主主義の最大の実験場」と言われるように、揺り戻しの動きも出ています。ニューヨークでは1月、イスラム教徒で民主社会主義者のマムダニ市長が就任しました。その「ブラザーズ、シスターズ」というべき人たちが、11月の中間選挙で注目を集めています。結果次第では、そうした揺り戻しの動きを世界がまた追いかけることになるかもしれません。若い人たちが「対話」を試みる活動もあります。「これでは永遠に分断されたままになる」と、リベラル派の若者たちがトランプ派の集会に行って同世代と対話をする。逆にトランプ派もリベラルの方に来て「ちょっと会議をやろうよ」といった動きが始まっています。

 海外に23年住んで、日本はとても尊敬されていると感じます。初対面の人に「日本から来た」と言うと、「日本には絶対、一生に1度は行きたい」「美しいし、日本人は大好きだ」とベタ褒めです。近代的な軍隊も憲法もない国が西洋の仲間入りをし、戦争をして敗戦のどん底から20年余りで高度成長を遂げた。その歴史が尊敬の的なんです。一方で、敗戦後の日本は世界中から助けてもらってきました。トヨタやソニーなど優れたものを生みましたが、海外の人が買ってくれたからこそ、輸出大国として繁栄できた。日本は「ギブ・アンド・テイク」ではなく、ずっと「テイク、テイク」で豊かになったという感じがします。だから今後は国際社会に恩返しする意味で、国民レベルで「ギブ」をしてほしい。それでこそ「美しい国」「美しい国民」と思ってもらえるのではないでしょうか。

◆選挙のときに「きちんと考える有権者」になることが大切

 尊敬される要素として、81年間戦争をしていない「平和大国」になったこともやはり大きい。小学生が1人で電車で通学できる国なんて他にありません。「日本って平和で安全だよね」という印象はSNSで広がっています。だから日本の若い世代が内向きになっていくのが本当に心配。日本人に排外的な考えが少しずつ増えている事実は、日本に長く住む外国人たちは肌で感じています。共に生き、豊かさを共有していくことが根付かないと、真の美しい国ではなくなってしまうと思います。

 トランプ政権の本質は「分断を呼ぶポピュリズム」。事実上の移民迫害は自分の身にも降ってきかねず、自由だと思っていたものも簡単に奪われるのだと、生まれて初めて経験しました。トランプ型の自己中心的なレトリックが世界に広がる中で、「自由」や「平等」が非常に危うくなっています。普通に仕事ができる、家族がいる、ペットが飼える、大学で勉強ができる。そうした自由は大切なものなんだと、改めて認識すべき時が来ています。

 やはり選挙のときに「きちんと考える有権者」になることが大切です。日本と米国では民主主義の根付き方に違いを感じます。米国民は選挙のとき、家族で議論したり夫婦げんかになったりするぐらい、真剣に考えて投票します。メディアには財団などが寄付をしていて、NYにある非営利の調査報道専門ニュースサイト「プロパブリカ」は、2200万ドル(約35億円)規模の寄付を取材活動に使っています。そうした財団に理由を聞くと「メディアしか民主主義を監視できない。トヨタでもウォルマートでもない。だから助成し、権力を監視してもらうのだ」と答えます。「ガーディアンUS」(英国の主要日刊紙の米国向けオンライン版)は大勢の個人が少額でも寄付をしていて、誰でも無料で読めます。「民主主義の大切さ」を市民レベルで理解しているから、「選挙も行かなくちゃいけない」となる。報道を比べ、友達や家族とも話をして決めるという作業が定着しています。

 日本でも東京都杉並区で女性区長が再選し、実家のある神奈川県鎌倉市では昨年の市議選で候補者の半分近くを女性が占めるなど、地方レベルでは変化を感じます。今後、有権者がついていけるかどうかですね。



 津山恵子(つやま・けいこ) 米ニューヨーク在住フリージャーナリスト。元共同通信記者。著書に「現代アメリカ政治とメディア」など。


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