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警察の「スマホ遠隔解析」に漂う危うさ「戦前の治安維持法下になりかねない」権利侵害(東京 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/09/25 (Fri) 13:18:02

警察の「スマホ遠隔解析」に漂う危うさ 「戦前の治安維持法下になりかねない」権利侵害の懸念:東京新聞デジタル
https://www.tokyo-np.co.jp/article/517486





 匿名・流動型犯罪グループ(匿流)による被害を防ぐ必要性が急務だとして、スマートフォンから通信内容を取得する「遠隔解析」を議論してきた警察庁の有識者検討会は24日、導入に向けた提言をまとめた。これを受け、警察庁は、遠隔解析について定めた関連の警察官職務執行法の改正案を、10月召集予定の臨時国会に提出する見通しだ。(北川成史)

◆遠隔で通信内容を入手する新たな手法が必要と指摘

 匿流は強盗や詐欺事件の際、秘匿性の高い通信アプリでメンバー同士がやりとりするため、関係者の一部を摘発しても、組織全体の解明や次の標的の特定が難しく、捜査や防犯上の課題になっていた。

 提言はこうした状況を踏まえ、遠隔でスマホから通信内容を入手する新たな手法が必要という見解を示した。一方で、憲法で保障された通信の秘密やプライバシーに関わるため、事前に裁判官の許可状(令状)を取得する仕組みを求めた。

 実施方法としては、犯人同士の連絡や犯人から被害者への連絡に使われた端末に対象を限定することや、重大犯罪による被害が差し迫っていて、他の方法では情報収集が困難であることなどを提案した。

◆遠隔解析の手法を警察庁は明言せず

 収集する通信内容は狙われた人の名前や住所、犯行日時、実行役の人数など。無関係な情報を取り扱った場合は消去するほか、事後に公安委員会への報告や対象者への通知をして、適正性を担保すべきだとした。

 導入された場合の運用としては、逮捕した実行役のスマホなどから、警察が指示役のスマホを特定し、遠隔解析を仕掛け、そこで得た標的に関する情報を基に、警察官が被害防止に動くケースが想定される。

 遠隔解析の手法を警察庁は明言しないが、海外の先行例に基づくと、マルウエア(悪意あるソフトウエア)を使ってスマホに侵入し、情報を複写する「ハッキング」などが考えられる。

 警察庁は8月10日から今回まで5回の有識者検討会を開催し、議論していた。

  ◇  ◇

◆わずか1カ月で「導入妥当」と結論づけた検討会

 匿名・流動型犯罪グループ(匿流)が使うスマートフォンに入り込み、情報を取得する「遠隔解析」。導入に向けた有識者検討会の議論が1カ月余りで終了するなど、警察庁は関連法の早期成立を目指す。目的は「犯罪予防」との位置付けだが、犯罪捜査に近い色合いも漂う。「通信の秘密」をどこまで制約できるのかを含め、議論を尽くすべき点は多い。

 栃木県上三川町(かみのかわまち)で5月に起きた強盗殺人事件をはじめ、匿流はメンバー間で秘匿性の高い通信アプリの「シグナル」や「テレグラム」を多用する。端末間の通信を暗号化する機能があるため、通信傍受や事業者からデータの提供を受ける従来の手法では、通信内容の把握が困難だった。

 このためメンバーのスマホに侵入し、暗号化前の情報を取得する遠隔解析の合法化を警察は切望していた。検討会は、8月10日からわずか1カ月の間で、「必要限度で通信の秘密やプライバシーを制限して行うことは憲法上認められる」として導入を妥当とする提言を結論づけた。

 だが、疑問点は残る。

 提言は「犯罪として未成立の段階でも警察が(遠隔解析で)介入すべき場面が多いと予想される」として、家宅捜索などの刑事手続きを定める刑事訴訟法ではなく、犯罪予防の行政手続きとして警察官職務執行法の改正で制度を導入することに合理性があるとした。

◆警察庁は「ハッキング」という言葉を避ける

 一方で提言は、遠隔操作で得られた情報を刑事手続きの証拠として使うことも許容している。

 遠隔解析の手法と考えられるハッキングは、行為としては不正アクセス禁止法違反に当たる。法令行為として違法性が阻却され得るが、イメージを気にしてか、警察庁は「ハッキング」という言葉を避けており、はっきりしない。

 遠隔解析の必要性を説く際、警察庁は「匿流対策」を前面に出す。しかし、匿流の定義は難しい。検討会は「数人の共謀によると認められる犯罪の被害」を実施要件として提案したが、それだけでは匿流以外の共犯事件まで対象が広がる。

 裁判所に許可状を請求する際、未来に起きる犯罪の恐れをどう説明するのか。情報技術の専門家ばかりではない公安委員会がチェック機能を果たせるかなども課題になる。

◆「本来は刑事訴訟法の改正か刑事訴訟法の特別法で定めるべき」

 京都大の池田公博教授(刑事訴訟法)は「匿流による重大な被害が急増し、従来手法が機能しない中で有効な対策」とし、適正性確保のための裁判所の事前審査や本人への事後通知などは「合理的」と評価した。

 一方で「通信の秘密やプライバシーの制約を伴うので、必要かつ相当な限度で行うことが非常に重要」と指摘。「軽微な犯罪にまで用いるのは考えにくい」として、適用罪種の限定を検討課題に挙げたほか「制度の透明性を確保するため、運用上、実施状況を何らかの形で公にすることも検討に値する」と述べた。

 関西学院大の小西葉子准教授(憲法)は、遠隔解析対象者への事後通知で不服申し立ての機会の確保を図っている点を評価しつつも、全体として「侵害される権利の重要性に対して侵害する措置の厳しさを正当化できるのか」と懸念する。

 「遠隔解析は実際には刑事手続きの証拠に使うことを念頭に置いた『捜査』に当たる。本来は刑事訴訟法の改正か刑事訴訟法の特別法で定めるべきだ」と主張する。

 「もし犯罪予防目的でこれだけ強い措置が許されるなら、通信傍受も家宅捜索も予防目的で可能になる。何かの組織に関わっていそうだから家の中をひっくり返すという戦前の治安維持法下のような状態になりかねない」と警鐘を鳴らす。


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