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『ジャガイモよ、お前もか』──日本の食が崩壊する日が迫っている(日刊ゲンダイDIGITAL - 七転八起 Shichitenhakki

2026/09/20 (Sun) 21:30:36

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/393218



鈴木宣弘 東京大学大学院教授

1958年、三重県生まれ。82年東大農学部卒。農水省、九州大学教授を経て、06年から東大教授。 1958年、三重県生まれ。東京大学大学院特任教授、名誉教授。専門は農業経済学。82年東京大学農学部卒業。農林水産省、九州大学大学院教授を経て2006年より東京大学大学院教授、24年より現職。「食の戦争」(文藝春秋)、「悪夢の食卓」(角川書店)など著書多数。







 私は最近、『ジャガイモよ、お前もか』というタイトルで、様々な場所で訴えを続けています。今、アメリカから、生ジャガイモの輸入を解禁しろという要求を突き付けられ、ついに日本側がこれを認めるという悪夢のような方向性が出てきたからです。これがどれだけ大変なことか、日本のジャガイモは絶滅する恐れすらあります。

■食料をアメリカに差し出してきた「従属国・日本」の黒歴史

 そもそも、なぜ生ジャガイモの輸入を迫られるのか。もちろん、米国農業の儲けになるからですが、それだけではありません。米国の占領政策の第一は、日本の農業を弱体化させ、米国産農産物に依存しなければ日本人は生きていけないようにすることでした。優秀な日本人が食料と農業で自立すれば、再び、米国に歯向かいかねない。だから、日本人を徹底的に弱体化させ、米国の支配下に置くために胃袋を握る「胃袋からの属国化」という戦略です。「コメを食うな、アメリカの小麦を食え」と要求し、日本側もまた自動車を輸出して米国で儲けさせてもらうために、国民の食の安全や農業の未来を「生贄」として米国に差し出してきたのです。「食料なんて安い米国産を輸入すればいいんだ」と言い訳し、しかし、実態は隷従する。これぞ、日本の食料安全保障の正体でした。

 その結果がどうなったか。日本の食料自給率は下がり続け、いまや完全に米国の農産物に依存する国になってしまいました。第二次トランプ政権では、ついに米も「アメリカの米をもっと食え」と要求され、年間60万トンもの米国産米を買う約束をさせられました。これは新潟県の米の年間生産量59万トンよりも多い量です。一県の努力が丸ごと消し飛ぶほどの量を、アメリカ一国から買う。これが今の日本の姿です。そして次なる米国の要求が、今回の生ジャガイモなのです。

■日本のジャガイモを全滅させる「シスト線虫」の恐怖

 米国は長年、日本の生ジャガイモを「病害虫がいるから危ない」という理由で輸入禁止にしています。その一方で、自国のジャガイモについては日本の輸入解禁に怒り、解放を迫ってくる。理不尽極まりない関係こそ、米国と日本の力関係です。この不平等な関係はジャガイモに限りません。日本のサクランボは米国が受け入れを拒否していますが、米国側は物凄い圧力で日本に対し、アメリカンチェリーの輸入解禁を迫りました。日本が輸出できないのに、米国の農作物の輸入を解禁させられた例は、ぶどう、メロン、キャベツ、ネギなど、たくさんあります。そして、「ジャガイモよ、お前もか」というわけです。

 米国産のジャガイモには「シストセンチュウ」という、非常に厄介な害虫がいます。一度この線虫が日本に侵入すれば、日本のジャガイモが全滅しかねない。このシストセンチュウは、卵が「シスト」という殻の中で10年以上も生き延び、寒さにも乾燥にも強い。一度、その土地が汚染されたら、もう根絶は困難なのです。

 農水省の官僚はこの危険性をよく理解していました。だから、米国を前に「俺は生ジャガイモの輸入は絶対に許さん」と体を張り、そのために左遷された課長が何人もいます。我が身を犠牲にしてでも、日本の農業と食を守ろうと戦ってきた人々がいたのです。しかし、こうした必死の抵抗の歴史も、今の政権によって、一気に崩壊させられようとしています。


■健康を売り渡す「ポストハーベスト農薬」と「遺伝子組換え」

 問題はシストセンチュウだけではありません。ジャガイモを輸出する際には、米国から日本へ船で長期間輸送します。そのため、ジャガイモには収穫後に防カビ剤をかける。その一つ、殺菌剤の「ジフェノコナゾール」は、日本では禁止されている農薬です。ところが、日本側は、米国からの輸入を認めるために、「これは食品添加物ということにしましょう」と、自ら提案したのです。さらに残留基準値を20倍に緩和した。アホかと!と言いたくなります。

 1970年代にレモンの輸入の際にも全く同じことが行われました。発がん性があるとして一度は禁止された防カビの農薬を「食品添加物」と名前を変えて受け入れたのです。我々は、禁止された農薬まみれのジャガイモを食べさせられることになる。
もう一つの問題は「遺伝子組換えジャガイモ」が入ってくる危険性です。日本はすでに2017年に、アメリカで開発された遺伝子組換えジャガイモを「安全」だと認めてしまっています。このジャガイモは「RNAi干渉法」という技術で作られていますが、この技術は、目的以外の遺伝子の働きを止めて、他の生物にも影響を及ぼす可能性が指摘されていて、未知なるリスクをはらんでいます。

 もし米国産のジャガイモが大量に入ってくれば、その中に遺伝子組換えジャガイモも入ってくるでしょう。スーパーで売られる場合、遺伝子組み換え食品は表示義務がありますが、外食で使われた場合には表示義務がありません。つまり、消費者は知らない間に遺伝子組換えジャガイモを口にしてしまう危険があるのです。

■我々に残された、唯一の抵抗手段

 私は学者になる前、農水省に15年間いました。その経験から言えば、米国からの要求に対し、農水省が「拒否する」という選択肢は最終的にありませんでした。我々にできるのは、数多くの要求リストの中から「今年はどれとどれを差し出すか」という、屈辱的な順番を決めることだけでした。牛肉、オレンジ交渉などを経て、ついにコメまで米国産を大量に買わされることになった。そして、最終段階の総仕上げでジャガイモを突きつけられた。農水省の課長が必死で抵抗しても、順番を遅らせることしかできなかった。これぞ、屈辱の歴史です。

 しかし、それにしても、今回はあまりにも酷い。複数の農水省職員が犠牲を払ってまで守ろうとしてきたものを、今の政権はあまりにもあっさりと売り渡してしまった。トランプ大統領は中間選挙を前に「成果」が欲しい。それにホイホイ応じたのでしょう。日本の政治家は国民と米国と、どちらを向いているのか、と問いたくなります。

 今現在、北海道や長崎の農業団体が必死に反対の声を上げていますが、もはや少々の動きではこの流れは止められません。

 では、どうすればいいのか。諦めるしかないのか。

 まだ可能性はあります。それは、国民世論のうねりです。生産者だけでなく、私たち消費者も一緒になって大きな反対の声を上げることです。

 今、ネット上では多くの方がこの問題の深刻さに気づき、反応してくれています。【日本のジャガイモを守りたい!#米国産の生ジャガイモの輸入に反対します】という署名は、わずか数日で10万人を超え、今や20万人に迫る勢いです。
https://www.change.org/p/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%82%92%E5%AE%88%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%84-%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E7%94%A3%E3%81%AE%E7%94%9F%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%81%AE%E8%BC%B8%E5%85%A5%E3%81%AB%E5%8F%8D%E5%AF%BE%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99-333a510a-8826-49ad-928d-60ca73d1b011?source_location=search

「署名なんてやっても無駄だ」と言う人もいます。普段なら私もそう思うかもしれません。しかし、それは声の数によります。この署名が100万、200万、あるいは1000万という規模に達すれば、さすがの政権も無視できなくなる。選挙に影響が出てくるからです。ぜひ、皆さんも真剣に考えてみてください。

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