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「正解」の「楽しくなさ」 ニューヨークの教育現場におけるAI禁止措置を考える(東京新聞 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/09/14 (Mon) 19:01:55

「正解」の「楽しくなさ」 ニューヨークの教育現場におけるAI禁止措置を考える(東京新聞デジタル
https://www.tokyo-np.co.jp/article/514917





〈本音のコラム+〉北丸雄二(ジャーナリスト)

 新聞記者の1年生はだいたいが支局勤務となってその地方の事件事故や裁判を担当します。大学は文学部だったので、事件がどう捜査され裁判がどう進むのかなど、刑事訴訟法、刑法については普通の人と同じくらいしか知りません。勢いすぐに先輩記者に質問して叱(しか)られました。「聞けばなんでもわかると思うな。自分で調べなきゃ何にもならん」

 思えばそれがすべての基本でした。質問するにしてもまずは何がわからないのかがわからないと疑問も浮かばない。わからない点、知らなければならない部分がわかったとしても次にどう調べればよいのかがわからなければ調べることもできない。調べたとしても個別の案件に関しては既存の文献などには見当たらず、専門の人物に当たらねばならない──。

 新聞記者に限りません。どんな仕事もそうでしょう。もっと言えば、どんな勉強も。

 ただ、仕事と勉強は違う。勉強はきっと、仕事をするときのための練習問題です。それ自体で何かを生み出すわけではなく、いわばプールに入る前の準備体操です。そうしなければ脚が攣(つ)ったり体調を崩したりして溺(おぼ)れちゃうかもしれないから。

 ニューヨークのマムダニ市長が、この9月の新学期から市内60万人の公立小中学生が勉強で生成AI(人工知能)を使うことを禁じる措置を講じました。まさに「聞けばなんでもわかると思うな。自分で調べなきゃ何にもならん」です。

 一方で高校生にはますますAI化する世界に対応する必要があるとして「AIリテラシー講座」を設け、「AI依存の前に、AIに関して批判的に考えられる」機会も与えるそうです。

 対して日本では文部科学省が「教育現場で生成AIを適切かつ積極的に活用していく」という推進ガイドラインを打ち出しました。もちろん生徒に丸投げしてAIを勝手に使わせるのではなく、AIはあくまで「自分の考えへのアドバイス・壁打ち相手」としての道具という位置付けですが、一律ブロックのニューヨークとはその主体性の次元でそもそもの立ち位置が違うように思えます。

 教育現場におけるAI利用の弊害はすでに多方面から指摘されています。

 私たちの実際の思考では誤ること、失敗することが大きな反省と学びとなって思考の転換や別次元の発想をもたらしたりします。何より自分で考え抜いて苦労して得られる答えは、かなり楽しい。間違っていても悔しさというエネルギーを与えてくれる。

 対してAIは、その回答自体にもまだ誤りやデッチ上げがありますが、それは反省や悔しさに結びつくというよりもAIへの責任転嫁となって自身の学びとは違うところに行ってしまうような気がします。それに何より、「正解」に一直線に向かうことで、紆余(うよ)曲折や試行錯誤、思索の遊びといった予想外の楽しみが薄れてしまうのではないか?

 そう、コスパ、タイパといった効率一筋の生き方とは違う大切な何かがそこにはないように思われるのです──友情とか恋愛とか尊敬とか、効率とは無縁の、それがどう役に立つかもわからない、その時には無駄に思われるバカみたいなものこそが、実は若さの醍醐味(だいごみ)だったりするのですから。

 おまけに、「テック業界は『早期からのAI教育は不可欠』と主張していますが、マムダニ市長は『利益を得る企業が資金提供した研究を除けば、小中学生にAIが有益であると示す明確な研究データ(エビデンス)はまだ存在しない』と指摘して、『企業の利益のために子どもたちの開発や教育環境が犠牲にされるべきではない』という立場をとっています」と、私の質問にGoogleのAIは回答しています(←確かに、すごい回答能力だなあ)。

 そんなことを考えていたら先頭を行くアメリカの生成AI企業「アンソロピック」の若手研究員が「あと数年でAIが超知能(スーパーAI=ASI)にまで進化し、邪魔者と認識した人類を絶滅させる恐れがある」と警告して退職したというニュースが伝わってきました。

 ASIが誕生するのは早ければ来年、2027年だという情報もすでに報じられています。その危険性を認識しながらも開発の最中にいる研究者たちは開発競争から逃れられないという「呪縛」も指摘されています。

 どうすればよいのかもまた、AIに質問すればよいのでしょうか? で、果たしてそこで、私たちが生き延びるための「正解」は得られるのでしょうか?

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