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豪雨多発でアンダーパスは要注意 万一の際の車からの脱出、今からできる準備は?(東京新聞 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/09/11 (Fri) 11:19:36

豪雨多発でアンダーパスは要注意 万一の際の車からの脱出、今からできる準備は?(東京新聞デジタル
https://www.tokyo-np.co.jp/article/514762





 今年は列島各地で線状降水帯による豪雨が多発し、アンダーパスなどで水没した車に閉じ込められ、死亡する被害が相次いでいる。国土交通省によると、アンダーパスは全国で約3800カ所(昨年3月末時点)に上り、国交省はアンダーパスなどでの水没防止対策をまとめたガイドラインを策定する方針だ。命を守るため、何ができるかを取材した。(中川紘希、坂田奈央)

◆まず試すことは? ガラスを割るには

 一般社団法人「日本自動車連盟(JAF)」東京支部の認定セーフティアドバイザーの家田未那美氏は「アンダーパスの冠水は濁っていることが多く、見た目よりも水深が深いことがある。車種や車高、電気自動車(EV)かガソリン車かを問わず、水没して動かなくなるリスクがある」と指摘する。

 万が一、車が水没してしまった場合どう対応すべきか。家田氏は、脱出のためにまずはドアや窓が開くかどうか試すことを推奨。水圧や電気系統のトラブルなどで開かない可能性があるとし「緊急脱出用のハンマーを常備し、運転席のドアポケットなど取りやすい位置に置いておき、使うべきだ」と提案した。

 フロントガラスはひびが入っても割れにくい構造になっているとし、サイドガラスをたたくことを推奨。「窓の四隅のどこかを割ると効率よく作業ができる」と説明した。冠水の水位が高い場合、エンジン部分など、重さのある方向に車が傾くこともあるとし「慌てず落ち着いて行動する必要がある」と呼びかけた。

 千葉県内を中心に担当するJAFの千葉支部には、千葉豪雨のあった8月13、14日に1000件以上の救援要請があった。

 家田氏は「要請が多ければ現場に到着するのに時間を要する場合がある。またレッカー車は浸水したアンダーパスに進入できず水が引いた後の作業になる」とし「道路の冠水はいつ、どこで発生するかわからない。大雨が予想される日は車の使用を控える、運転をしないという選択も重要」と呼びかけた。

◆そもそもなぜアンダーパスが整備された?

 そもそも、アンダーパスはどのような経緯で生まれたのか。

 東京都江戸川区の元危機管理監の土屋信行・リバーフロント研究所審議役は「日本では高度経済成長期から、交通体系の中で自動車を重要視してきた。鉄道の踏切で渋滞が発生すれば自動車交通が停滞するため、アンダーパスが整備されてきた」と解説する。

 今回のアンダーパスにおける人的被害を受けて、それぞれのアンダーパスの排水設備を改修する必要性を指摘。さらに「温暖化によって大雨被害が激甚化しており、都市そのものが持っている降雨処理能力を超えてしまっている」と問題視。都は風水害対策として地下調整池などの整備を進めているとし「全国で、都市全体の排水能力を向上させる取り組みが求められる」と話した。

 静岡大防災総合センターの牛山素行教授(災害情報学)は「アンダーパスでの車両冠水事故は毎年多発しているが、人的被害につながることは極めてまれだ」と話す。

 アンダーパス以上に、相対的に低くなっている道路が冠水し、車が進入し流されて亡くなるケースが多いと説明。「アンダーパスであろうとなかろうと、冠水した道路があれば、立ち止まる、引き返すことが大原則だ」と強調。最近は注目度が低い土砂災害のリスクにも改めて注意を向ける必要性も指摘した。

◆被害頻発…水没防止のガイドライン策定へ

 今年は各地で想定外の大雨による被害が相次ぐ。千葉県によると、8月の千葉豪雨では、車の水没に伴い県内で男女4人が死亡、このうち2人が道路のアンダーパスでの被害だった。愛知県や岐阜県では今月8日、線状降水帯が発生。名古屋市で1時間降水量が104.5ミリと、統計開始以来最大の降水量を観測した。市内ではアンダーパスで道路が冠水し、車が立ち往生する被害も起きている。

 千葉豪雨を受け、国交省は大雨時に冠水が見込まれるアンダーパスやトンネルでの水没防止対策をまとめたガイドラインを策定する方針だ。具体的には、冠水の可能性があるアンダーパスに車が進入しないようにするため、雨が降る前の予防的な事前通行規制の導入や、通行に関する雨量基準の見直しなどが想定される。

 アンダーパスとは、主に市街地で道路や鉄道などと交差し、前後区間に比べて急激に道路の高さが低くなっている区間。国交省によると、アンダーパスは昨年3月末時点で47都道府県に計3841カ所ある。

 国交省は8月末、千葉市内の「国道16号村田町アンダーパス」で車が水没したことに伴う死亡事案を受け、このアンダーパスに関して

・レベル4大雨危険警報の発令

・1時間雨量が50ミリに到達

などの場合は通行止めにする規制を設けた。

 さらに北海道釧路市や山形県酒田市などにある他のアンダーパス6カ所も規制対象に追加。だが今月7日には、福島県いわき市の市道のアンダーパスで大雨による冠水が発生し、車が水没して60代の女性が亡くなった。

 金子恭之国交相は8日の記者会見で、福島のアンダーパスでの女性死亡に関し、千葉豪雨後の点検を踏まえ「8月28日に排水ポンプに異常がないことを確認したと聞いている。事故の経緯について確認を進めている」と説明。ガイドラインの策定を急ぐとともに、事前通行規制の対象をさらに拡大する方針を示した。

◆通勤・通学ルート上にアンダーパスは?

 防災士で防災用品販売のヒカリネット(福島市)社長の後藤秀和氏は「排水ポンプは想定された排水量までしか処理できず、想定を超えた雨はたまる。停電時にはポンプが止まるおそれもある。大雨と停電、冠水は同時に起きると考えた方がいい」と指摘する。実際、千葉豪雨で冠水した国道16号村田町アンダーパスでは、停電などの影響で排水ポンプが正常に作動しなかった。

 後藤氏は「大雨が予想される日はできるだけ車の利用を控えてほしい」と強調。東日本大震災での被災経験から「災害時、車は『速い移動手段』ではなくなる」とし、

・通勤・通学ルート上のアンダーパスの位置を把握する
・緊急脱出用ハンマーの用意

など、日頃からの備えを呼びかける。

 防災システム研究所の山村武彦所長は「日本は亜熱帯のように、短時間に強い雨が降る気候に変わってきており、意識も百八十度変える必要がある」と指摘する。近年の激しい集中豪雨を踏まえ「機械や機能だけに頼るアンダーパス対策には限界がある。重要なのは、何かが起きる前に安全な側へ倒す『フェイルセーフ』の発想だ」と話す。

 具体的には「大雨警報が発令された時点で自動的に通行止めにするなど、危険を未然に避ける仕組みが必要だ」とし、水防団など地域の力を借りて迅速に対応できる体制の整備も求める。その上で「長期的には排水設備などの設計を見直し、短期的には地域との連携による迅速な通行止めなどの対応策を組み合わせていくことが重要。ドライバーもハザードマップなどを活用し、自ら危険を避ける意識を持ってほしい」と訴えた。



◆デスクメモ

 連日のように発生する線状降水帯。アンダーパスで浸水した車に閉じ込められた犠牲者のニュースを目にする度、胸が痛む。国には早急にガイドラインを策定してほしいが、それだけでは限界がある。命を守るため、大雨の予想が出ている場合は車での外出を控えることを徹底したい。(ぶ)


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