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高市首相の肝いり、迷走する「給付付き税額控除」の怪東京新聞デジタル - 七転八起 Shichitenhakki

2026/09/07 (Mon) 20:03:16

https://www.tokyo-np.co.jp/article/513135





〈本音のコラム+〉三木義一(青山学院大名誉教授)


 高市早苗氏が2025年秋の自民党総裁選挙で、突如「給付付き税額控除」の導入を言い出したときは驚いた。

 なぜなら、給付付き税額控除のシステムは、単なる減税の仕組みだけではなく、日本の税財政の根幹に関わる仕組みの改革も含むものだったからである。端的に言えば、各省庁の利権を前提に、大臣を輩出してきた自民党には本来受け入れ難い改革のはずだったからである。今回の改革騒動が、結局訳のわからない改革に終わった経緯を振り返れば、おのずとその意味がわかるであろう。
 高市氏が唐突に給付付き税額控除を導入すると言い、高市内閣になると2026年2月にさっそく「社会保障国民会議」が設けられた。そのメンバー構成を見たとき、まず大きな違和感が生じた。元慶応義塾長の清家篤氏が有識者会議の座長で、翁百合政府税制調査会長が副座長クラスの位置づけであったからである。
 清家氏は厚生労働省と関係の深い研究者だから、この委員会は厚労省が全体をリードするということを意味していた。税制改革であれば、本来は政府税調会長が中心に取り仕切り、税額控除という名の還付を組み込むことで、社会保険料の未納問題などを解消することも視野に入れるもののはずだからである。民主党政権の時には、国税庁を「歳入庁」に組み替え、税と社会保険を統合して扱う方向性が明確に示されてもいたのである。
 もちろん、厚労省からすれば歳入庁にされてはたまらない。彼らの最大の利権である、社会保険料が奪われてしまうからである。

 メンバーを見て私が最初に感じた違和感は、換言すれば、財務省にはものを言わせないぞ、という厚労省の強い姿勢であったのである。このことは、4月10日に公益財団法人東京財団から「中低所得勤労者への就労支援と格差是正を目指した政策提言」として「『給付付き税額控除』の導入に向けた具体的な制度設計」が示されたことで、より明確になったように思われた。『給付付き税額控除』という訳語を徹夜で考えた森信茂樹氏をはじめ、通常財務省の委員会で活躍するメンバーたちが政府の委員会から外されてこちらで政策提言をしていたからである。
 この提言では、かなり具体的なところにまで踏み込んでいた。
1.勤労者個人を対象とした支援
2.年収の壁を作らないよう給付を段階的に減額
3.公金受取口座を通じた給付で実施
4.自治体の所得情報とガバメント・データ・ハブ(仮称)の活用
5.給付は国の事務
6.財源は所得税制の見直しと社会保障制度改革
 といった提言であった。実際に導入すべきことを意識した改革案であった。
 要するに、給付付き税額控除を入れて、社会保険料などに手を突っ込ませたくない厚労省や自民党と、他方で何とか税額控除の仕組みを入れて財源の見直しの一環として社会保障制度も検討したい財務省側の研究者の対立でもあったように思われる。
 その後の経緯は、金融資産や正確な所得把握インフラの整備に時間がかかるため、当面は税と一体化した「税額控除」は見送ることにされ、飲食料品の消費税率ゼロも2027年4月1日からの早期実施を実現するために1%になるという、何が何だかさっぱりわからない決着となった。

 要するに高市氏はさしあたり内閣支持率アップの材料になりそうな、税額控除を入れさせようと思ったのであろうが、そのことはより深い社会保険料と税金の関係にも関わることであり、50年かけて一本化を図ったオランダのような強い政策の意思がなければならなかったし、社会保険料には手を出させたくない厚労省のリードに委ねれば、あのような決着になるのは最初から決まっていたようにも思われるのである。
 私たち日本人はさまざまな保険制度に関係させられ、負担額(保険料)の計算基準も同一ではなく、徴収も一元化されていない。それに加えて、地方税は総務省の管轄で、各種の負担の基準もまちまちであり、国税とも異なる。国税は財務省が握り、毎年の税制改正で、次々に制度が変わる。もう何が何だかわからない。税は嫌だが、保険料は訳がわからない。
 今、私たちに必要なのは、これらを統合して国民にわかりやすい財政制度を構築できる政権なのに、国民は相変わらず目先の利益に左右されている。
 このことの危険性は1949年のシャウプ勧告で指摘されていたのだが、私たちはいまだにその周辺を彷徨(さまよ)っているわけである。

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