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アメリカの内政干渉はスルー?自民が掲げる「外国干渉防止法」笑えないブラックジョーク(東京 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/09/07 (Mon) 10:58:06

アメリカからの内政干渉はスルー? 自民が掲げる「外国干渉防止法」の笑えないブラックジョーク:東京新聞デジタル
https://www.tokyo-np.co.jp/article/513801





 高市早苗首相が強い意欲を示す「スパイ防止法」の制定に向けて、自民党が具体案を提言した。掲げた名称は「外国干渉防止法」。国家を揺るがす外国勢力の工作活動を処罰するとの趣旨だ。だが、日本が受けてきた主な「外国」の「干渉」は米国からではなかったか。インテリジェンスの司令塔として政府が新設した組織は警察の影響が強く、外交・安全保障などの課題改善にかなうのか。(中根政人)

◆「国民の理解と信頼なしには成り立たない」

 「外国勢力の隠れた工作から、公正な民主主義を守っていく観点で、情報防衛力のさらなる強化が喫緊の課題だ。一歩を踏み出した後に、二歩、三歩と進んでいかなければならない」

 自民党本部で8月5日に開かれた政調審議会。小林鷹之政調会長は、政府のインテリジェンス機能強化のための法整備をさらに進める意義を強調した。
 党のインテリジェンス戦略本部長も務める小林氏は、7月28日に開かれた本部会合で「インテリジェンス改革は、国民の皆さまの理解と信頼なしには成り立たない」とも述べ、国家の「監視強化」を警戒する声をけん制した。
 自民と日本維新の会が昨年10月20日に交わした連立政権の合意文書には「総合的なインテリジェンス改革について協議し、合意した施策について実行する」と明記された。このうち、政策の司令塔機能を果たす「国家情報会議」の創設法が先の特別国会で成立。次に焦点となるのは、スパイ防止に関する法制定や国内外で本格的な諜報(ちょうほう)活動を解禁するための「対外情報庁(仮称)」の設置などだ。

◆外国勢力による「不正な」干渉行為に刑事罰…政府に検討求める

 こうした中、自民はインテリジェンス政策の拡充に向けた新たな提言を取りまとめた。安保目的で外国の情報機関などに対する通信傍受を可能とするための「対外情報収集法(仮称)」の整備や、2027年度末までの対外情報庁設置などのメニューが並ぶ中、スパイ防止を巡っては「外国干渉防止法(仮称)」との名称で、外国勢力による「不正な」干渉行為に刑事罰を科すとする法整備の検討を政府に求めている。

 だが、ここで引っかかるのは「外国干渉防止」という言葉。そもそも日本は、「同盟国」の米国から、表立って内政干渉を受け続けてきたのではないのか。
 米国による日本への政策変更の「圧力」は、経済や安保など多岐にわたってきた。例えば、1990年代以降に日米両政府が互いの国の規制改革などを求めるために取り交わした要望書では、派遣労働の規制緩和や郵政民営化など、米国側の要望が一方的に実現してきたとされる。

◆「米国の手先ならOK、中国の手先なら処罰対象となるようなら…」

 アーミテージ元国務副長官やナイ元国防次官補らが2012年にまとめた報告書では、日本が集団的自衛権を行使できない状況を「日米同盟の障害」と批判。その後、2015年に集団的自衛権の行使容認を含む安保関連法が成立したほか、日米間の機密情報保護を強化すべきだとの主張は、特定秘密保護法として具体化されている。
 直近も、ベセント財務長官が1日の記者会見で、日本に対して「(緩和的な財政金融政策を志向する)リフレ政策をやめるべきだ」と注文を付けた。
 こうした米国による干渉行為に唯々諾々と従う日本が「外国干渉防止」を掲げても、看板倒れにならないのか。
 慶応大の金子勝名誉教授(財政学)は「政治体制が米国と一体化しているかのような現状は、本当に自立した『独立国』と言えるのか」と指摘。自民が提唱する「外国干渉防止法」に対しては「米国の手先になっても不問とされ、中国の手先なら処罰対象となるような内容だとしたら、極めて恣意(しい)的だ」と揶揄(やゆ)する。

◆警察出身の人材が国家情報局を取り仕切る体制、識者は

 高市氏が進める「インテリジェンス機能強化」の政策を巡っては、専門家からも外交・安保政策などの深化や国民の安全を高めるような情報の収集・分析能力の向上につながらないとする声が出ている。

 7月31日に始動した国家情報会議に関しては、これまでの内閣情報調査室(内調)を格上げする形で事務局として同時に設置された国家情報局の局長に、内調トップの内閣情報官だった原和也氏を起用。原氏は警察庁出身で、同庁警備局長など主に「公安系」でキャリアを積んだ人物だ。
 国際ジャーナリストの春名幹男氏は、国内の「治安維持」を担う警察出身の人材が国家情報局を取り仕切る体制について「高市氏は、現在のインテリジェンス政策のどこに問題があるのか、なぜ重要な情報が(政府に)入ってこないのかをよく考えず、『警察官僚が政策を牛耳っているからお願いしよう』という形になっている」と断じる。

◆「旧日本軍の特務機関と同じ存在になってしまう」

 外交・安保政策を重点的に協議・検討する組織としては、すでに国家安全保障会議(NSC)や事務局の国家安全保障局が存在する。国家情報会議や国家情報局は「同格」との位置付けだが、春名氏は「本来は、NSCが関係機関からの報告などを基に政策を考える立場だったはずだ。国家情報会議が、同じようなメンバーで組織立てされてしまっている」と述べ、役割の混乱を懸念する。

 スパイの歴史や現状に詳しい東京工科大の落合浩太郎教授は、国家情報会議の議長を首相が務めることについて「他国では、インテリジェンスと政策立案の機能を分離するのが常識だ」とした上で「首相が自ら、情報の分析や判断に取り組む会議体のように見える」と主張。
 高市氏の場合には、台湾有事が集団的自衛権を行使する「存立危機事態になり得る」とした国会答弁の「危うさ」を挙げ、「インテリジェンスの面でも独善的な判断に踏み切れば、国策を誤ることにつながる」と警告する。
 一方、日本政府による本格的なスパイ活動を可能とする対外情報庁の設置を巡っては、米中央情報局(CIA)やイスラエルの対外特務機関モサドなど、諸外国のスパイ組織では政治的な工作活動など非合法の活動も許容されている現実がある。
 落合氏は「日本政府にはそうしたノウハウも気概もない。役人の数が増えるだけになりかねない」と本気度を疑う。
 一方、春名氏は「(旧日本軍の)特務機関と同じ存在になってしまう。違法な活動はしないと明確にすべきだ」と訴える。

◆「瞬く間に速いテンポで『戦争前夜』に近づいてきている」

 スパイ防止を含む「インテリジェンス機能強化」を名目とした組織の構築や法整備が、国民を守るものとならず、戦前の軍国主義の体制下のような「公安」の拡充による国民監視の仕組みにつながるとしたら…。不安は広がるばかりだ。
 8月22日に東京都文京区で開かれた「日本戦没学生記念会(わだつみ会)」の集会では、同会の冠木克彦理事長が「高市氏は『戦争の被害を受けないために軍拡をする』という理屈の中で、スパイ防止法の準備も進めている」と強い危機感を示した。
 わだつみ会は、戦没学生の遺稿集「きけ わだつみのこえ」の出版を契機に設立された平和運動団体。戦前の治安体制の問題に詳しい小樽商科大の荻野富士夫名誉教授(日本近現代史)は集会で講演し、高市氏がスパイ防止などの法整備にひた走る現状をこのように形容した。
 「『新しい戦前』からさらにもう一歩進む形で、瞬く間に速いテンポで『戦争前夜』に近づいてきている。1930年代と今が重なって見える」



◆デスクメモ

 ハッキングやスパイの危険にさらされる現下の国際情勢。日本が無防備でいいとは思わない。だが、「外国干渉防止」とは、あまりに品がない気がする。ハリネズミのように身構える露骨な姿勢が、平和国家としてふさわしいのか。せめて言葉だけでも、もう少し練ってみては?(せ)



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