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「お花畑と言われても」楽天市場撤退の老舗飲食店主が語る 迎撃ドローン支援報道で広(東京 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/09/01 (Tue) 10:56:22

「お花畑と言われても」楽天市場撤退の老舗飲食店主が語る 迎撃ドローン支援報道で広がる波紋:東京新聞デジタル
https://www.tokyo-np.co.jp/article/512488





 楽天グループが、迎撃用ドローンを開発するドイツ企業と連携し、防衛省へ納入支援することが報じられ、複数の取引先で「楽天離れ」が進んでいる。一方で、軍事技術と民生品は表裏一体。豊かな暮らしの恩恵を受けながら、軍事開発を批判することに否定的な意見も聞かれる。政府が「自衛のための戦力」を拡大させる中、市民や企業の平和への姿勢が問われている。(太田理英子、中根政人)

◆コーヒー豆やグッズ販売が軌道に乗り始めていた

 「ずっと反戦を掲げてきたのに、軍需産業に関わる企業に出店するわけにはいかない」。東京のJR新宿駅東口の駅ビルで老舗飲食店「ビア&カフェ ベルク」を営む井野朋也さん(65)は、「こちら特報部」の取材にきっぱりと語った。店内のところどころに、「NO WAR」などと書かれた張り紙やグッズがある。

 8月17日以降、楽天グループがドイツのスタートアップ(新興企業)「ヘルシング」と提携し、同社による日本の防衛省への迎撃用ドローン納入を支援すると相次いで報じられた。
 ベルクは3月から、楽天グループの通販サイト「楽天市場」でコーヒー豆やグッズの販売を始め、軌道に乗り始めたところだった。井野さんは通販を担当する社員を思って悩みつつ、「政権が『戦争ができる国』への準備を進める中、(民間と)軍需産業とのかかわりがなし崩しに広がってしまう。この流れにのみ込まれてはならない」と、19日に楽天市場からの撤退を決めた。

◆相次ぐ撤退に楽天は…「回答を控えさせて頂く」

 楽天の迎撃用ドローン納入支援を巡っては、雑誌「通販生活」を発行するカタログハウス(東京都渋谷区)も18日、ホームページ(HP)上で「企業理念とは相いれない」と楽天市場への出店取りやめを表明。「『憲法九条』に託した非戦の誓いを守っていくべきと考えている」と記した。

 革小物の製造販売を手がける「ガッツ」(大阪府茨木市)も24日に撤退声明を出した。楽天や利用者を否定する意図はないとした上で、「平和こそが道」といった社の理念を踏まえて「平和という価値観を守るために、売り上げを減らす経営判断をした」と言及。「大切なのは、自分たちの価値観と行動が大きくかけ離れていないか、問い続けること。平和は一人ひとりの小さな選択の積み重ねではないか」ともつづった。
 楽天グループの担当者はドローンに関する報道について「防衛産業のイノベーションの加速を後押しできればと考えている」と説明。一部の撤退の動きには「特定の店舗様やお客様などに関する事項については回答を控えさせて頂く」とコメントした。

◆「応援と批判が半々だが、批判というより難癖ばかり」

 交流サイト(SNS)では「#楽天不買運動」との投稿も広がる。一方で、反戦の意思表示に対する批判も散見され、その矛先はベルクにも向く。井野さんは「応援と批判が半々だが、批判というより難癖ばかり」と淡々と語る。

 イラク戦争が勃発した2003年以降、反戦メッセージを店内や店頭で掲げてきた。批判や苦情を受けることが何度もあったが、「憲法で戦争放棄がうたわれているのに、反戦を訴えるのがなぜ悪いのか。多くの人が行き交う空間だからこそ、さまざまな声があっていいはずだ」と話す。
 井野さんの祖父は、戦前の東条英機内閣などで閣僚を務めた。祖父は戦後、自身の戦争責任を口にし、「権力者は民衆が声を上げることを恐れる」と述べたという。井野さんは、こう強調する。「『お花畑だ』と言われようとも、影響力はなくても、地道に声を上げていく」

◆軍事的活用への懸念や反対意見が封じられる風潮が

 楽天への批判の動きについて、テレビ番組で女性タレントが、軍事技術が家電など日常生活で使う製品の技術に転用されているとし、反対するなら「山で暮らすべきだ」との持論を展開したことが、物議を醸している。
 ドローンに限らず、軍事技術と民間の先端技術は「表裏一体」の存在なのは間違いない。だが、軍事的な活用への懸念を示すことが批判の対象となる現状をどう考えるべきか。

 ウクライナや中東などの取材に取り組んできたジャーナリストの志葉玲氏は、紛争地でのドローンの活用の現状に関して「ミサイルよりも安価で大量生産がしやすく、市民に甚大な被害をもたらしている」と話す。「カメラの付いたドローンは、個人を特定して追跡し、住宅の中であろうが、どこまでも入ってきて攻撃を加える。『誤爆』ではなく、民間の市民と分かった上で襲うという点で極めて悪質な存在だ」と解説する。その上で「日本では、こうしたドローンの負の側面が十分に理解されていない」とし、反対意見が封じられる日本での風潮に危機感を示す。

◆AIやドローン分野で世界に遅れ…政府や企業には焦りが

 一方で、防衛省は8月31日、過去最大の要求額となる約8兆9000億円の2027年度予算概算要求を決定した。無人機や人工知能(AI)の活用を含む「新しい戦い方」への対応などを柱に位置付ける。また、既にドローン開発を巡っては、三菱重工業や川崎重工業など防衛産業に関わる企業が参入方針を打ち出している。

 企業側の背景事情について、米の外交・安全保障専門誌東京特派員の高橋浩祐氏は「軍事、民間を問わず、米国や中国などの技術面での覇権争いが激化している。だが、日本は技術の平和利用はOKで軍事利用はだめだというスタンスの中で、AIやドローン、サイバー、宇宙関連の分野で後れをとってしまっているとの焦りが(政府や企業の側に)ある。少しでも世界に追いつこうと、外国の技術を必死に取り入れようとしている」と分析する。
 だが、ドローン技術の進展はAIとの組み合わせによっては、自律型致死兵器システム(LAWS)の普及にもつながる。人間の倫理を度外視した「ロボット兵器」によって、戦争の風景がさらに大きく変化することになりはしないか。

◆「消費者にとって身近な企業が、突破口に」

 京都産業大の岩本誠吾客員教授(国際法)は、AIやドローンなどの先端技術に対し「軍事面で野放図に利用されないよう、国際法と国内法、企業倫理の3段階で縛りをかけることが重要だ。特にAIに関しては、武器使用や武力行使の段階で使用しないというルールが不可欠になってくる」と主張する。
 企業の軍事への関与が問題視されたケースは、伊藤忠商事が子会社を通じて、イスラエルの軍事企業エルビット・システムズと協業の覚書を結び、その後打ち切ったほか、産業用ロボットメーカー「ファナック」が同国などの軍需企業と取引関係にあると指摘を受けた件などがある。

 楽天グループは、インターネット通販のほか、金融、通信などを手がける巨大企業。市民団体「武器取引反対ネットワーク」の杉原浩司代表は、楽天の事案を「消費者にとって身近な企業が、ドローンという殺傷兵器の導入に関わっていく意味で、これまで存在してきた『平和国家』という歯止めの崩壊を加速させる突破口になりかねないと危惧している」と訴える。
 その上で、一般消費者にこう呼びかける。「消費者一人一人の選択によって、過ちを犯そうとしている企業を止めることができるはずだ。消費者や市民は、政権が進める現在の『軍事化』の流れを押しとどめる役割を果たすべきだ」



◆デスクメモ

 「平和は一人ひとりの小さな選択の積み重ね」という「ガッツ」の声明が重く響く。現代社会の中で、民生品の多くに軍事技術が応用されている。だから「反対するな」と切り捨てるのではなく、懸念や批判の声を上げるのも一つの選択。積み重ねれば、企業も無視できなくなるはずだ。(祐)


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