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〈寄稿〉食料品1%は愚策中の愚策 消費税廃止こそ景気を好転させる :湖東京至(長周 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/08/31 (Mon) 14:42:25

〈寄稿〉食料品1%は愚策中の愚策 消費税廃止こそ景気を好転させる 元静岡大学教授・税理士 湖東京至(長周新聞
https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/38879





食料品0%と1%の違いは何か



 高市内閣が今年2月の衆院選の選挙公約に突如、食料品ゼロ%を持ち出した。それは選挙に勝つことが「悲願」である高市首相が、野党の一部が提起していた食料品ゼロ税率を、熟慮することなく横取りしたものである。高市氏は消費税がどういう税制度か表面的・感覚的にしか理解しておらず、経済実態や法律的検討をおこなわなかった。会計システムをゼロ税率に変更するには大変な時間がかかることさえ知らなかったというお粗末ぶりだ。



 1%への変更ならすぐできるとしてゼロ%を止めたのは、恥ずべき公約違反である。消費税法上から見れば、ゼロ税率は輸出販売と同様に「還付金のある非課税」であるが、1%は現行8%の「軽減税率の税率変更」となる。税法上の取扱いは大きな違いがある。ただ、経済的側面から見れば、【表】に示すように食品会社への還付金が減少するに過ぎない。結論を先に言えば、ゼロ税率も1%も愚策中の愚策である。



食料品を1%にしても物価は下がらない



 食料品の税率が1%になったら、価格が7%下がり家計が助かると思っている人がいる。だが、価格は絶対下がらない。なぜなら、消費税という税金は消費税分を本体価格に上乗せして消費者から徴収しなくてはならないという義務も保証もないからだ。



 反対に、税率が下がっても店や企業は値段を下げる義務はない。値段を下げる下げないは市場の動向による。現在でも、食料品は物価高騰の影響を受けて値上げが続いており、消費税に関係なく今後も値上げは続く可能性が高い。



街から飲食店がなくなる



 飲食店は食料品が1%になったら、消費税の納税額が増えて経営が成り立たなくなる。現在、飲食店は1年間の売上高に10%かけた額から、年間食材仕入れにかかる消費税8%と、水道光熱費、店舗の家賃、消耗品等にかかる10%の消費税分を差し引いて納税している。それが食材仕入れに係る消費税が1%しか引けなくなるため、消費税の納税額が大幅に増える。今でも消費税の納税に苦慮している飲食店は、消費税の納税額増大が倒産の引き金になり、結果として街から飲食店がなくなる。



 簡易課税を選択している小規模な街の飲食店はどうなるだろうか。簡易課税で飲食店に適用されている「みなし仕入率」は現在60%。それがそのまま据え置かれれば納税額は変わらないが、政府は益税が出るとして「みなし仕入率」を20%程度に引き下げるかもしれない。そうなったら、消費税の納税額は今の2倍になり、これも、倒産の引き金になる。


食料品1%で得をするのは食品会社



 街から飲食店がなくなる半面、食料品ゼロ税率で得をする会社がある。それはサントリーなど大手食品メーカーだ。【表】に示すように、サントリーなどは消費税を1円も納めないばかりか、還付金が貰えることになる。端的にいえば、食料品1%は食品会社に補助金を与えるための制度といってもいい。



我も我もと政治家に陳情



 食料品が1%になれば、他の業界も黙っていない。外食産業はもとより、鉄道・バス・タクシー、運輸・物流、書籍・新聞、医療・医薬品、電気・ガス・水道、映画・演劇、住宅建設・修理、子供服・衣料品等々が、わが業界も1%を適用すべきだと政界工作をするだろう。軽減税率獲得運動は、消費者の要求運動ではなく、事業者団体の運動である。政治献金の多寡が業界の盛衰を左右するため、業界と政治家との癒着が起き、献金問題はさらに悪化する。



 フランスのレストランは、かつて19%の標準税率で課税されていた。レストランの付加価値税の納税額は、課税期間の売上高×19%から課税期間の仕入高や経費にかかる付加価値税の額を差し引いて算出される。肉や野菜、ミルクなどの食材仕入れは5・5%の軽減税率が適用されているため、付加価値税の納税額は他の業界に比べて大きくなり、経営を圧迫する状況が続いていた。そこで外食産業団体は2007年に行われた大統領選挙の際、サルコジ大統領候補に直訴し、選挙応援をするかわりに、外食産業の税率の引き下げを要求した。当選したサルコジ大統領は、レストランの税率を19%から10%に引き下げた。レストランの値段は9%下がっただろうか。否、ほとんどのレストランのメニューは書き換えられず、値段は据え置かれたままだったという。



食料品1%は消費税の税率引き上げを招く



 政府や食料品1%推進論者は、減収分およそ5兆円にかわる財源を示していない。減収分を何で賄うのか。危険なのは「食料品1%による税収減は、同じ消費税の増税によって賄うのが筋だ」という主張だ。すでに自民党内では12%に引き上げる案がささやかれている。



 食料品などに軽減税率を導入しているヨーロッパ諸国は、フィンランド25・5%、ノルウェー、スウェーデン25%、イタリア22%、フランス20%、ドイツ19%など高い標準税率を持っている。ヨーロッパ諸国において、軽減税率をすべて廃止すれば標準税率を大幅に引き下げることが可能になるという研究結果を発表している財政学者がいる。それは伝統的な付加価値税(第一世代の付加価値税)に対し、現代的な第二世代の付加価値税といわれており、軽減税率や非課税を設けず、標準税率だけの単一税率制をとる。すでに実施しているのがニュージーランドで、税率は15%の単一税率である。



 食料品1%の軽減税率を導入することは、時代に逆行する仕組みを設けることになり、やがてヨーロッパ諸国のように高い標準税率を持つようになる。ヨーロッパ並みの高い税率は、日本経団連が強く求めているところであり、高市内閣は日本経団連の要望を実現するために食料品1%を打ち出したといっても過言ではない。



消費税は廃止すべき



 消費税は輸出企業に消費税を還付しつづけている。さらに食料品1%で還付を受ける企業が増える。一方、還付を受けられない事業者は赤字でも納めなくてはならない。そのため、事業者間に一層負担格差を招く愚策中の愚策である。また、消費税は人件費率の高い中小企業の負担率が高く、外注や派遣が多い大企業の負担率が小さいという不公平がある。畢竟(ひっきょう)、消費税は人件費に課税する税金なので、消費税がある限り企業は極力人件費を減らそうとする。そのため賃金アップが抑えられてしまう。



 事業者は赤字でも消費税を納めなくてはならないから、常に滞納の脅威にさらされる。消費税を廃止すれば、中小企業やフリーランスは赤字でも納税しなければならない恐怖から解放され、経営環境は好転する。その結果、従業員の賃金も上がり、消費税導入以来低迷を続けてきたわが国の景気を好転させることができる。



 消費税を廃止するのはいいけれど、代わりの財源がないのではないかと心配する人がいる。心配無用。財源はたっぷりある。代わりの財源は、税金の公平原則・応能負担原則に基づき、大企業や富裕層に応分の負担を求めれば十分に確保することができる。




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