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〈社説〉改正皇室典範が成立 象徴天皇制揺るがす暴挙(東京新聞デジタル - 七転八起 Shichitenhakki

2026/07/18 (Sat) 11:40:03

https://www.tokyo-np.co.jp/article/502221





 皇族数の確保をうたった改正皇室典範が成立した。憲法第1条で「国民統合の象徴」とされた天皇と、それを支える皇室に関する制度を大きく変える岐路に立つ。
 当初掲げた与野党の幅広い合意という前提が崩れ、「男系男子」による皇位継承を強固にする保守的な内容に変質した。高市早苗政権が国会の権威をおとしめ、強引な改正に踏み切った暴挙は厳しい非難に値する。
 女性天皇や女系天皇を容認する世論との乖離(かいり)は甚だしく、象徴天皇制に対する国民の信頼が揺らぎかねない。皇位継承を男子に限ったことで皇統の先細りは避けられず、皇室の存続自体が憂慮される状況だ。
 憲法が定める象徴天皇制を維持することができるのだろうか。

◆国民の総意には程遠く

 改正の柱は(1)女性皇族が結婚後も皇族身分を保つ(2)1947年に皇籍離脱した旧11宮家の男系男子を養子に迎える-の2点だ。
 女性皇族は身分を保持するものの、夫と子は一般国民のまま。身分の差が生じ、皇室が続けてきた家族一体の公務は困難だ。将来の皇族数増加にもつながらない。
 一方、養子制度では養子自身は皇位継承資格を持たないが、子が男子なら資格を持つ。旧宮家は皇室と血縁関係が非常に遠い上、約80年も皇室から離れている。国民の敬愛を得られるか疑わしい。
 養子と養親の自由意思で縁組が決まるというが、政治的思惑による介入の懸念は拭えない。門地による差別を禁じた憲法に違反する恐れもある。縁組が実現しても、男子が次々に生まれる可能性が高いとは言えない。皇統が断絶する恐れは依然深刻である。
 立憲民主党や共産党などが改正案に反対したのは当然だ。賛成した自民党、中道改革連合からも退席や欠席が相次いだ。
 そもそも今回の改正では皇位継承問題を先送りし、皇族数確保に限って全13党派の合意を目指すはずだった。しかし、国会が総意を取りまとめる段階で一部野党の意見を無視しただけでなく、政府が改正案をつくる段階で国会の取りまとめを逸脱し、男系男子による継承に踏み込んだ。
 衆院で3分の2以上の議席を占める数の力を背景にした高市政権の「だまし討ち」ではないか。国会での審議も衆参合わせて6時間余りで拙速との批判は免れまい。天皇の地位を「国民の総意に基づく」と定める憲法の規定にも背く「改悪」と断じるほかない。
 天皇に政治的権能はないが、戦後日本の歩みに果たした役割は大きい。代表例が徹底した平和主義だろう。戦争犠牲者を慰霊する旅を重ね、かつての敵国や侵略した国には加害の歴史を巡り遺憾の意を表明した。不戦の誓いを繰り返し、憲法で誓った平和国家としての歩みを体現したとも言える。
 困窮する人々に寄り添う姿勢でも一貫している。障害者や難病患者、被災者らを励まし、共生社会へ向けた道筋を示してきた。
 今回の改正で象徴天皇制や皇室の営みが途切れたり、変質したりすれば、国民の信頼を失い、国民の総意に基づく「象徴」としての地位に疑義が生じかねない。

◆男系男子に固執するな

 高市政権はなぜ、そうした危険を冒してまで、男系男子による皇位継承に執着するのか。審議では「古来、男系継承が維持された重み」などと空疎な答弁を続け、合理的理由を示せなかった。
 「伝統」とされる男系男子による継承の根源は男尊女卑という古い社会慣習だ。明治憲法下では天皇は軍隊の統帥権を持ち、家父長制度の頂点にあった。女性・女系天皇は、当時の政府には都合が悪かったのだろう。現代の男女平等の理念には著しく反し、首肯できるものではない。
 現憲法は、天皇の国事行為や公的行為に性別の制約を設けていない。世論調査では女性・女系天皇の容認派が大勢を占め、国民の多くは女性差別を内包する天皇制の欠陥を見抜いているのだろう。
 欧州では第1子継承とする王室が増え、オランダやベルギー、スウェーデンなどの現皇太子は女性である。国連の女性差別撤廃委員会は2年前、皇室典範の改正を勧告した。男系男子による継承を維持する理由は見いだせない。
 生まれる子が男子でも女子でも平等に扱い、女性・女系天皇を認めることが、封建的要素を持つ天皇制を現代に適合させる唯一の道だ。皇室存続の可能性は自然に高まり、日本社会に残る女性差別を解消する契機にもなるだろう。
 改正皇室典範には見直し規定が設けられている。皇位継承の在り方を引き続き、議論することが必要だ。男系男子継承という時代錯誤の規定を一新し、男女平等理念に立脚した現代の象徴天皇制を実現するための議論に期待したい。


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