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社説:改正皇室典範が成立 象徴天皇の土台揺るがす (毎日新聞 - 七転八起 Shichitenhakki

2026/07/18 (Sat) 11:24:13

https://mainichi.jp/articles/20260718/ddm/005/070/113000c





 象徴天皇制の土台を揺るがしかねない。強引に進めた政府・自民党の責任は重い。

 現行憲法の下、皇室典範が実質的に初めて改正された。早急な取り組みが必要な皇族数確保策に論点を絞って議論してきたはずだったが、皇位継承に関する改正に踏み込んだ。

 特に問題なのは、約80年前に皇室を離れた旧宮家出身の男系男子を皇族の養子に迎える規定だ。旧宮家の男子だけが皇族になれる特別な身分となり、憲法14条が禁じる「門地による差別」にあたるとの疑念が消えない。

 養子に男子が生まれれば皇位継承権を持つ内容の条文まで盛り込まれた。男系男子による継承が将来にわたって固定化される。

 衆参両院の正副議長見解では与野党の意見対立を生まぬよう皇位継承問題を棚上げしたが、そこから逸脱する。女性・女系天皇の実現に前向きな立憲民主党が「だまし討ち」と反発したのは当然だ。

・総意を崩した男系固執

 参院本会議の採決では、野党第1党の立憲など6党派が反対・棄権した。「立法府の総意」が崩れたのは明白だ。

 自民は2月の衆院選で大勝した勢いを駆って、養子案をごり押しした。「国民の総意に基づく」はずの天皇を巡る問題を、高市早苗首相は国論を二分するテーマに位置付けてしまった。国民統合の象徴である天皇の正統性を損ないかねない。

 そこまでして男系継承にこだわる理由は不明確だ。野党が国会で質問しても、木原稔官房長官は「皇位は皇統に属する男系の男子が継承する」と定める典範1条を読み上げるばかりだった。説明になっていない。

 「男系」が明文化されたのは明治期で、それ以前の皇統は「男系」「女系」が意識されていなかったとの学説もある。明治憲法で女帝が否定されたのは、男尊女卑が強かった当時の社会を反映したからだといわれている。

 自民幹部は国会で、男系継承は「2600年以上にわたって守り抜いてきた伝統」と主張してはばからなかった。「今年は皇紀2686年」と戦前の紀年法まで持ち出す保守派議員もいた。

 明治憲法では、男系により「万世一系」で続くことが天皇の正統性の源泉とされた。だが、約2600年前に即位したとされる初代・神武天皇は神話上の存在だ。

 神話や特定の価値観を根拠に皇室制度を改正することは、国民主権や基本的人権を定める日本国憲法の精神と相いれない。

 戦後、天皇の位置付けは「象徴」に変わった。皇室は国民と共にあろうと、新たな姿を模索してきた。被災地訪問や慰霊の旅などを通じて交流を続け、それが国民に受け入れられた。

・女性・女系議論早急に

 国民の価値観が多様化し、女性の社会進出が進む中、世論調査では女性・女系天皇を容認する意見が大勢を占める。

 伝統は尊重されるべきだが、国民感覚とそぐわなくなっているなら見直しが求められる。男系という血統だけで、共感や敬愛が得られるものでもあるまい。

 宮内庁によると、1947年に皇室から離脱した旧宮家の人々は天皇陛下と36~38親等離れる。野党から「赤の他人ではないか」との声も上がった。

 改正典範では、天皇陛下の長女愛子さまら女性皇族が結婚後も皇室に残れるようになった。ただ、夫と子は、自民の主張に沿って皇族としない。女性・女系天皇の可能性を封じようとした結果、一般国民と皇族が同居するいびつな家族を生むことになる。

 今回の議論の出発点となったのは、上皇さまの退位を実現した特例法の付帯決議だった。安定的な皇位継承の実現に向けた取り組みを求めたものだ。

 男系継承では女性配偶者に男子出産の重圧がかかり続け、天皇制を持続させることは難しい。将来も安定的に継承をしていくためには、女性・女系天皇の議論を避けては通れない。早急に検討を始めるべきだ。

 今回あらわになったのは、男系にしがみつく自民と、時代の変化を反映させた象徴天皇像を支持する国民との乖離(かいり)だった。

 皇位継承の議論は、天皇とはどのような存在か、国民との関係はどうあるべきかを問い直すことにつながる。主権者である国民自らが考える時だ。


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