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エプスタインとチョムスキーの関係から見えてくる西側言論界の浅薄な実態《櫻井ジャーナル - 七転八起 Shichitenhakki

2026/02/11 (Wed) 15:17:03

https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202602110000/





 アメリカ司法省は保有するジェフリー・エプスタインに関するファイルの約半分を公開した。残りの半分は封印したいようだ。

 公開された文書や映像では加害者を特定できる情報は厳格に隠されているが、被害者のプライバシーが明らかにされるケースがあり、問題になっている。公開されたのは約600万ページのうち約300万ページだけで、非公開の理由として、児童の性的な虐待を描写したものがあり、「死、身体的虐待、負傷」を描写した文書や画像が含まれからだという。犯罪だが、捜査が始まったという話は聞かない。

 エプスタインとの関連で名前が浮上した人物は多い。勿論、ロスチャイルドの名前も出てくるが、イギリスのアンドリュー王子(現在はアンドルー・マウントバッテン-ウィンザー)、サラ・ファーガソン、アメリカの政界ではビル・クリントン、ヒラリー・クリントン、ドナルド・トランプ、アル・ゴア、ロバート・ケネディ・ジュニア、俳優のレオナルド・デカプリオ、ケビン・スペイシー、ブルース・ウィルス、キャメロン・ディアズ、クリス・タッカー、映画監督のジョージ・ルーカス、歌手のマイケル・ジャクソン、モデルのナオミ・キャンベル、理論物理学者のスティーブン・ホーキング、言語学者のノーム・チョムスキー、ハーバード・ロー・スクールで教鞭をとっていた弁護士のアラン・ダーショウィッツなども含まれている。

 体制に批判的な言論人と見なされてきたチョムスキーがエプスタインと親しかったことを意外だと感じる人もいるだろうが、本当の反体制派がアカデミーの世界で生きることはできないと彼はかつてプリンストン大学の大学院で博士号を取得しようとしていたノーマン・フィンケルスタインという学生にアドバイスしている。

 シオニズムについて研究していたフィンケルスタインは1984年に出版されたジョーン・ピーターズの『太古の昔から:パレスチナをめぐるアラブ・ユダヤ紛争の起源(日本語版:ユダヤ人は有史以来)』に興味を持ち、読んだのだが、疑問を持つ。この本はベストセラーで、著名な劇作家のソール・ベローや歴史家、ジャーナリスト、作家として知られているバーバラ・タックマンなどから絶賛され、ワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙などの大手メディアも誉めたたえていた。

 その本の主張はパレスチナ人は存在しないというもの。パレスチナ人はユダヤ人が国を築いた後に移住してきたのであり、イスラエルが彼ら全員を追い出しても道徳的な問題はないと主張していたのだ。その本の主張が作り話であり、完全に捏造された代物だということにフィンケルスタインは気づいたのだ。

 チョムスキーによると、フィンケルスタインは予備的な調査結果をまとめた25ページほどの短い論文を書き上げ、そのテーマに興味のありそうな30人ほどの学者などへ送り、意見を求めたのだが、返事を出したのはチョムスキーだけだったという。

 チョムスキーはフィンケルスタインに対し、「確かに興味深いテーマだと思うが、もしこれを追求すれば面倒なことになるだろう。アメリカの知識人社会を詐欺集団として暴露することになり、彼らはそれを気に入らず、君を破滅させるだろうから」と警告、「この問題を追求すれば君のキャリアは台無しになる」とも注意したという。(Norm Chomsky, “Understanding Power,” New Press, 2002)

 しかし、その警告を読んだ上でフィンケルスタインは論文を書き上げて学術誌に投稿し始めたが、反応は何もなかった。唯一、イリノイ州で発行されている「In These Times」という小さな雑誌が一部を掲載しただけだったという。プリンストン大学の教授陣はフィンケルスタインと口を聞かず、彼の論文を読まなくなる。こうした事情をフィンケルスタインはチョムスキーに話し、アドバイスを求めた。結局、大学は彼に博士号を授与したが、チョムスキーによると、これは「恥ずかしさから」だとしている。(前掲書)

 その後、フィンケルスタインはデポール大学で助教を務め、大学は彼に終身在職権を与えようとしたのだが、ハーバード・ロー・スクールで教授を務めていたアラン・ダーショウィッツは妨害工作を始める。彼のフィンケルスタインを攻撃するキャンペーンは数カ月に渡って続けられた。ちなみに、ダーショウィッツはエプスタインの弁護団に名を連ねていた人物。

 彼はフィンケルスタインの著作が世に出ることを阻止するためにカリフォルニア大学出版やカリフォルニア州知事だったアーノルド・シュワルツネッガーに働きかけ、大学はフィンケルスタインとの雇用契約を打ち切らざるをえなくなる。

 シオニストのダーショウィッツはフィンケルスタインを許せなかったのだろうが、フィンケルスタインの母親はマイダネク強制収容所、父親はアウシュビッツ強制収容所を生き抜いた経歴の持ち主で、ソ連軍に助けられたとしている。その母親はベトナム戦争におけるアメリカ軍の残虐行為に強い憤りを抱いていたと息子は語っている。その息子はガザにおけるイスラエル軍の残虐行為に強い憤りを抱いている。

 ナチ政権下のドイツがソ連へ軍事侵攻、敗北したという事実を消し去り、ガザにおける大量虐殺を正当化しようとしている西側支配層にとってフィンケルスタン親子は好ましくない人たちだ。ダーショウィッツのようなシオニストはフィンケルスタイン親子のようなユダヤ人を「自己憎悪」という用語を使って批判する。これを真似したのか、日本には「自虐史観」という用語がある。

 フィンケルスタインは自分が正しいと信じる道を歩き続けているが、チョムスキーがフィンケルスタインに警告したように、キャリアは台無しになった。それに対し、チョムスキーはアメリカの「知識人社会」に溶け込み、その背後に存在する支配層とも友好的な関係を結んでいた。必然的にある一線から先へは踏み込まない。そのひとつの結果がエプスタインとの関係だろう。

 チョムスキーはジョン・F・ケネディ大統領暗殺について歴史的な意味はないと主張していた。ケネディ政権も次のリンドン・ジョンソン政権も政策に大差はないと主張、暗殺に深入りすることを嫌っていたようだ。2001年9月11日に引き起こされたニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)への攻撃について、彼は公式見解を受け入れている。

 ふたつの出来事は事実が公式見解を否定しているのだが、チョムスキーはこの問題へ踏み込もうとしない。そこに支配層が引いた「レッドライン」があるのだろう。似たような生き方をしている「文化人」は日本にもいる。


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